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六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
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 『ごめんなさい』
 
 
【1】
「……私、それでもやっぱり。家族に会いたいです。一緒に居たいです。パパやママやノーちゃんと、一緒がいいです! 故郷に帰りたい……だから、ごめんなさいっ!!」
 
“ごめんなさい”?
わたしは、あの時どうして。
どうして、“ごめんなさい”と謝ったんだろう。
 
【2】
「ルクラちゃんは、家族を選んだのよ、ね?」
 
向かい合うようにして座った、ティアさんはわたしにそう言って、わたしはそこで、何故かどきりとした。
何故だろう。
そのときわたしは、大きな罪悪感を確かに感じた。
今まで出会った人達の顔が思い出されて、それが進むたびに、胸が痛んだ。
どうして?
わたしは、お家に帰らなくちゃいけない。
それは、この島に来てしまったその時から、真っ先に心に決めた事の筈で、誰が考えたって当然の決断に決まってる。
その筈なのに、あの時わたしは答えられなくて。
アルバイトが終わったその夜、忙しい仕事の中必死に考えた結論をティアさんに……。
……結論とか、そんな立派なものじゃないか。
だってわたしは、ティアさんの返事なんて待たずに、走って帰ってきちゃったんだもの。
それからこうして、ずっと布団の中に蹲って、誰かがわたしを晩御飯に呼びに来るのを待っている。
“ごめんなさい”の意味を、ずっとこうして考えてる。
わたしは、どうして“ごめんなさい”って、言ったんだろう。
 
「……ルクラ、元の世界に戻るって言ってたよね? 一度、僕のいた所に一緒に来て、そこで世界を繋げられるように試行錯誤してみるって言うのは、ダメ、かな?」
「そうすれば、一緒にいられる時間も伸ばせるし……」
 
あぁ。
そうか。
 
【3】
マコト・S・久篠院。
その名前はわたしのなかで、一際特別な意味を持った名前。
わたしの知らないもう一つの“好き”を教えてくれた人。
そして……わたしの知らなかった“好き”に当てはまる人……だと思う。
あの人の言葉が唐突に思い出されて、はっとした。
わたしが故郷に帰ることは、結局のところこの島の全てと“お別れ”することなんだ。
宿のお婆さん。
ずっとこの島で一緒に探検した、愛瑠ちゃん達。
エクトちゃんに、スィン君。
リズレッタ。
マコトさん、ティアさん、リーチャさん、ルークさん、レオノールさん。
くろさんともう一人のクロさんに、ジャックさん、ゲンザさん。
キキさんにララさん、みゆきさん、ファルさん、ヤヨイさん、はなさん、ミオンさんとカノンさん。
お別れしてしまえば、こんなにも沢山の思い出はわたしの手を離れて追憶に変わり、わたしはそれをただ眺めることしか、この先できなくなる。
全部じゃないけど……殆どがそうなってしまうのは、明らかだ。
正直言って、それは嫌だった。
でも、わたしの家族がずっと待ってる。
だから、わたしは帰ることを今になっても決意している。
決して揺らぐことの無い信念に、している。
だからマコトさんの提案は断った。
まだ道の断たれていない内から、甘えてしまったらいけないと思って。
その時も、ティアさんに“ごめんなさい”と謝ったときのように、胸が痛んだのを思い出した。
 
「ちょっと残念だけど、安心したんだよ。少しは揺れたみたいだから、僕はルクラの中では特別みたいだし、ね」
「見つかったら、しばらく離れ離れになっちゃうから、それまでにたくさん、二人の思い出つくろ?」
 
少なくともマコトさんは、わたしの決意を汲み取ってくれて、そう言ってくれたのだと思う。
その言葉にわたしは、救われた気がした。
けれど、わたしのことを知っている人には、わたしが嫌だと思ったように、わたしのことを追憶に変えたくない人が居るんだ。
それに気づかなかった?
……違う。気づきたくなかったんだ。
だからわたしはあの時、ティアさんに言われて……。
“ごめんなさい”って謝ったんだ。
 
【4】
わたしの思っていることは、目指すところは、我侭なんだろうかと疑問に思う。
……違う、と思う。
じゃあ、ティアさんやマコトさんの方が我侭なんだろうか?
……それも違う、と思う。
好きな人と離れたくないなんて、誰だって思うことなんだ。
ごくアタリマエ、普通の感情なんだ。
でもそれは時には、叶わないことでもある。
わたしなんかは、その叶わない例なんだろう。
きっと、そう。
でも、でもね。
がっかりしたり、諦めたりはしないでほしいな。
またいつか会えるから。
きっと会いに行くから。
“信じることが力になる”んだから。
永遠のお別れになるはずなんて、無いよ。
だから、悲しんで欲しくないな。
わたしも、我慢するから。

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