六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
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錬金術師は機械に夢中
【1】
ざく、ざく。
「さて少女よ」
ざく、ざく。
「答えを聞かせてもらおう」
ざく、ざく。
「野良仕事の最中なのは気にせず言うと良い」
「は、はぁ……」
宿“流れ星”の庭にある小さな畑を熱心に耕しながらラウルバーフは言った。
麦藁帽子と軍手と手拭いが実に良く似合っている。
お供のバルミアラは相変わらずすぐ傍で主人を見守る振りをしながら寝ているようだった。
予告通りあれから三日の時間が経過した今、彼と同行するかどうかの結論を、ルクラは出さなければならない。
しかし別に思いつめた様子もなく、ルクラは一度頷くと口を開いた。
「みんなと相談しましたけど……ラウルバーフさん。一緒に探索はオーケーだそうです。……勿論わたしも、賛成です」
「それは何よりだ。実に良い選択と云える」
ざく。
力強く鍬を振り下ろして、ラウルバーフは僅かに笑ったようだった。
【2】
「ありがとう、きっと作物もこれでよく育ちます」
「なに、先日の償いだ。礼など要らぬよ、ご婦人」
庭に用意されたテーブルに着き、出されたお茶と菓子を堪能しつつ、ラウルバーフは手拭いで自分の汗を拭う。
「さて、めでたく君と……君達か。同行する事になったわけだが……。何か聞いておきたいことはあるかね」
「うーん……それじゃあ、もうちょっとラウルバーフさんのこと、知っておきたいんですけれど」
「ふむ。私の事かね。……アルケミストだとは既に言ったから……ラブルスカ家にでもついて話そうか。素性も少しは知れるだろう」
「ラブルスカ……?」
「あぁ。ラブルスカ家は機帝国ではそれなりに名が知れている。資産家としてだ。私の妻が七代目の当主を務めている」
「……あれ? でもラウルバーフさんはゴトランドって名乗ってますよね?」
「うむ。ゴトランドは私の旧姓だし、本来なら結婚したときに私もラブルスカの姓に変わっていた筈なのだが……。何故かゴトランドの姓が良いと妻が我侭を言い出してな。数百年続いた『ラブルスカ』の名をあっさり捨てそうにまでなった」
「えぇぇ……」
「宥めるのに苦労した。それからまぁ色々と話し合って、ラブルスカの名はそのまま、ただし私たちはゴトランドの姓を名乗る、ということで一応の決着がついたのだよ。故に私もラブルスカとは名乗らず、ゴトランドのままを名乗っているわけだ。……考えても見たまえ、数百年という年月を積み重ねその地位を築き上げてきたラブルスカの名を捨て去っては、余り良い未来は見えんだろう? 『カネ』の世界では肩書きも少なからず必要であるし、時には重要な武器にもなるからな。……仕事上ではラブルスカであり、プライベートではゴトランドというなんとも奇妙な状態がこれで出来上がったわけだ。私が今此処でゴトランドと名乗っているのもそういう理由からだな」
「な、なんだか大変な事情なんですね……」
「いや、なに。慣れればなんということは無い。……うむ、これは美味い」
「それはよかった。遠慮せず食べてくださいね」
老婆の言葉にラウルバーフはもう一枚クッキーを口の中に放り込んで、その味を楽しんでいる。
紅茶でそれを胃の中へ流し込んだ時を見計らい、ルクラは二つ目の質問へと移った。
「えぇっと……アルケミスト、ってなんなんですか?」
「一括りに云うには少し難しいが……錬金術を行使する人間をそう呼ぶ。有名なものでは卑金属から貴金属を精錬するような行いか」
「……?」
「まぁ、そうだな。あの石ころを金に変える手段というだろうか」
「へぇ……」
「最も私はそういう行いとは無縁だがな。私が専門とするのは人工生命体だ」
「人工生命体?」
「たとえばあのバルミアラのようにな」
相変わらず黒い巨大鳥は寝ている。
「初めての成功例であり、私の最高傑作だ。……あの石ころを、バルミアラにした、といえば君にもわかりやすいかね」
「そんなこと、できるんですか?」
「石ころだけでは無理だが、さまざまな素材を使ってな。最も、私も確信の元成功させたわけではないから詳細は話せん。バルミアラは全くの偶然の産物のようなものだからだ。何故成功したのかを解き明かしたいものだが……」
「難しいんですか?」
「何せ私本人がまるで理解できていないのでな、バルミアラが生まれた過程を。同じ素材で同じことを何度やっても無駄だった。それに、今はもうその探求も止めている」
「それは、どうして?」
「いいかね。私のやったことは酷く歪んだ生命の誕生なのだよ。それを追求し、後世に残したとしても良い結果にはなるまい? いわば人間が立ち入れぬ領域に私は片足を突っ込んでいたのだ。その先に待ち構えているのは……」
確信に満ちた笑みを浮かべ、ラウルバーフは一旦言葉を切った。
「それに、娘が出来てからはなおさら探求することの恐ろしさも悟った。やはり命と言うのは定められた環境でのみ機能するのが一番なのだ。私のやっていたことは余りに強引過ぎる命の操作であった。……少々ややこしい話に逸れていたな。失礼。私の悪い癖だ」
「いえ、そんな……。えっと、なんとなくだけど、ラウルバーフさんのこと、よくわかった気がします。……でもラウルバーフさん?」
「ん?」
「探求をもう止めたんなら、素材探しは必要ないんじゃ……?」
「ふむ、いい質問だ。確かにもう、人工生命体の研究をしていないなら素材は要らん。だが……」
「?」
「別の研究に手を出したのだよ。確かこの中に……」
ごそごそとズボンのポケットを探り、ラウルバーフは何かをテーブルの上に置いた。
それは四角いブロックが重なって出来たような、やや不恰好な小さな人形に見える。
「さて」
頭の上の出っ張りを、ラウルバーフは軽く押す。
すると人形は勝手に動き出した。
「これは……?」
「機械だ。君も少しは知っているだろう?」
ジージーと音を立てつつ、しばらく動き回っていた人形だが、やがてぎこちなくだが手足を動かして踊りのようなものを始める。
「これはただの機械だが、ある人物と共同で、魔術と機械の融合というテーマに研究を進めていてな。此処にきたのはベースとなる機械の材料を見つけに来たというわけだ。ただの金属では魔術の力を存分に生かせないらしいから、それに代わる丈夫な素材や……まぁ色々だな。最も私には魔術分野となるとまるでわからんから、毎回適当に見繕っては帰るのだが」
「へぇー……」
「そこで話を元に戻すが君達と同行し素材探し、というわけだ。一人で探すよりは効率が良い。何せ此処に来るまでに日数を掛けすぎた。遅れた分を取り戻さなければいかん」
「うん……よくわかりました。出来る限り協力します!」
「ありがたい申し出だ。暫くの間だが、よろしくお願いしよう」
「はいっ! よろしくお願いします、ラウルバーフさん!」
大きな褐色の、ごつごつとした手に、小さな白い手が固い握手を結んだ。
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