六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
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太陽と月の子ら
【1】
「おねーちゃん」
「ん?」
「尻尾の使い方を考えよう」
ルクラの双子の妹、ノアが突然そんな事を言い出した。
机について勉強していた顔をあげて、ルクラはやや考える。
「……尻尾の先で物を取ったりとか」
くねくねと自分の尻尾を動かして、ルクラは鉛筆を絡めとろうとする。
しかし力加減がよくわからず、勢い余って床に落としてしまった。
「……意外とだめ」
「先端丸くて意外とニクイね」
「そうなんだよねー。尻尾の先が丸く膨らんでるから……」
「んー」
ノアはルクラに背を向ける形でぺたんと座り込んだ。
何をするのかと暫く眺めていたら、スカートの裾から出ていた尻尾がうねうねと床を這い回るような仕草を見せる。
「蛇のまね」
「おー」
どうやらノアは自分より尻尾の動かし方が器用らしい。
蛇行するその姿はまさしく白い蛇で、思わず拍手などをしてみたりする。
「……でも」
「三人にしかわからない芸なのが残念だね」
「……うん」
自分達の尻尾が見えるのは、自分達とそして母親だけ。
赤ん坊をあやすことすら出来ないし、それで楽しむことは二人にとって些か遅すぎた。
「ドアのノックに尻尾」
「……普通に手で叩いたほうが早いような」
「尻尾で……攻撃?」
「それ、ノーちゃん前にふざけてやってどうなったか覚えてるよね?」
「すっごく痛かったね。びりびりっと来た。タンスに小指」
「それに暴力は駄目だよ」
「うん」
くるくると尻尾の先端を暫く回しながら、ノアはゆっくりと立ち上がり、服の裾についた埃を払うような動作をして、それからベッドに勢いよく背中から飛び込んだ。
柔らかな布が彼女の身体を包み、衝撃を吸収した音が響く。
「いい使い方無いかな。これじゃあえーっと、『宝の持ち腐れ』ってやつだよ」
「うーん……」
床に落とした鉛筆を拾って元の場所に戻してから、ルクラもベッドに上がりこむ。
無造作に自分の尻尾を掴んで眺めているノアとルクラの顔は瓜二つで、ノアが髪を伸ばしていなければ区別のつけようが無い。
「……えいっ」
ふらふらと所存なさげにして居る二つの尻尾を見ていたルクラは、突然ある事を閃いた。
大それたことではない、浮んでは消えていく無数の小さな小さな考えの一つを適当に手に取ってみて、それを実行しただけだった。
「わ」
自分の尻尾の先端を、ノアの尻尾の先端にこつんとぶつけたのだ。
大して意味の無い行動。
「………………」
そのはずだったが、お互いが眼を丸くして、それから嬉しそうに笑った。
「尻尾で握手」
互いの尻尾を絡ませてみたり。
「尻尾で……ハートマーク!」
形を作ってみたり。
単純だが息が合わないと綺麗なものが作れない。
「おおー」
しかし彼女らは双子だった。
息を合わせるなど造作も無いことで、美しいハートマークが背を向け合った二人の間に出来上がった。
「ささやかな楽しみが出来たね」
「わたしたちにしか出来ない事、だね!」
「はじめての共同作業です」
それはさっきのノアが行った蛇のまねと大して変わらないように見えるが、一人でするのと二人でするのとではその意味が違ってくる。
片方でも欠けては出来ない事なのだ。
「おねーちゃん」
「ん?」
「……またしようね」
にっこりと微笑んだノアに、ルクラも笑みを返した。
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