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六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
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 杖と招待状
 
【1】
「それで、ルクラちゃんは見た感じ武器っぽそうなものを持ってないけど、何で動物たちを追い払ったりしてるの?あたしはこの杖なんだけどー」
 
猫の耳を生やした元気な桃色、あんずの言葉――。
 
「あ、そういえばルクラは突然この島に来たのよね。招待状は見てないのかしら?」
「私たちがこの島に観光にきたきっかけがその招待状なんだよね」
 
賑やかな二人の金色、キキとララの言葉――。
 
「杖……。招待状……」
 
ふと彼女達との会話の中で飛び出た二つの単語、それはルクラの頭にこびりついて離れる事は無かった。
 
【2】
気づけばこの島の街の広場で佇んでいた。
この島での冒険の始まりは、そんな唐突な発見からだった。
家族と共にベッドにもぐりこんで、ぐっすり眠っていたはずがそんな状況になっており、酷く慌てたのをルクラは覚えている。
忘れられる筈もない。
泣きそうになりながらも、街を探検したあの日。
老婆との出会い、この宿屋との出会い。
初めての遺跡探検。
思いがけぬ挫折。
全てが昨日の事のように――。
 
「――」
 
思い出せなかった。
挫折して、それから?
それから自分はどうしたのか?
ただ何もせず宿屋に篭り、ある日突然人が変わったように遺跡探検への意欲を燃やし、仲間を見つけ、大勢の人々と交流をするに至ったのだろうか?
ルクラは自覚していた、”記憶の欠落”を。
少なくとも三つの欠落を、自覚していた。
 
「………………」
 
メモに書き出す。
一つ、島に来る前。
家族お互いが『おやすみなさい』を言いあって、ベッドの中に妹と一緒に潜り込んだ、其処ははっきりと覚えている。
逆を言えば、”その場面しか覚えていなかった”のだ。
楽しい旅行のはずだった。
もっと心が踊るような楽しい出来事は沢山あった筈なのに、他に何一つ思い出せない。 
もっと他に、心に残るような楽しいこと、不思議な事があったはずなのに。
二つ、挫折してのそれから。
今でこそ自由自在に魔術、そして命術という新たな力をも使いこなすルクラだが、この島に来て暫くは全く使う事ができなかった事実が存在する。
仲間達と再び遺跡に繰り出し、そしてそこで、自分の力は失われておらず、また魔術は自らと共にある事を確信し、目の前に立ちふさがるトラウマ、巨大な壁だったそれを乗り越えた事は記憶に新しい。
しかし挫折と躍進、その二つの出来事こそ覚えてはいるものの、その間に敷かれたであろう苦悶の道、それをルクラは覚えていなかった。
大きなショックを受けて、我を失って涙したほどの出来事が、たかだか一昼夜で克服できうるはずも無い。
自分はどうやって、再び魔術を取り戻す事ができたのだろうか?
まるで靄がかかったように思い出すことが出来なかった。
三つ、リズレッタとの出会い。
既にリズレッタ自身が何度か問うているこの出来事も、彼女は記憶にない。
覚えているのは、倒れていたリズレッタを負ぶって帰ったこと。
それから、朝目が覚めたリズレッタに話しかけたこと。
一気に記憶は飛んで、気難しい物言いだったが同行する旨をリズレッタに伝えられたその時しか、覚えていない。
彼女がルクラに同行しようと心に決めた”あの夜”の出来事、そしてそこに至るまでの出来事は、彼女の記憶には残っていない。
記憶が無いと自覚できる三つの項目。
 
「杖……招待状。……杖と、招待状」
 
しかしそのうち二つは、あんずとキキとララの三人の言葉によって、ゆっくりと、徐々にだが、蘇り始めていた。
 
【3】
「お父さんとお母さんにおやすみなさい、って挨拶して。それからノーちゃんと一緒にベッドに入って……おやすみなさい、ってお互いに言って。その前は……、その前は……そうだ。トランプしたんでした、皆で」
 
いいぞいいぞ、その調子だ。
そんな事を言い聞かせながら、更に記憶を発掘していく。
 
「お父さんがずーっと負けたんだっけ。それでお母さんが『お父さんは賭け事には向いてないわね』なんて言って笑って。……逆にお母さんは勝ち続けだったなぁ。
 それから……トランプの前は……そうだ、ご飯。ビュッフェ形式で好きなものお腹一杯食べて……アップルパイ美味しかったなぁ。お母さんが作るやつの次ぐらいに……」
 
舌の上に広がる味は、林檎の甘いそれ。
なんだかお腹が空いてきたような気がするが、我慢する。
 
「……!」
 
暫し記憶の味に酔いしれていたルクラだが、突然ローブのあちこちを弄り始める。
ポケットがないのに気づいて、そもそも自分が探そうと思っていた品は鞄の中に入っていたことに気づいて、慌ててベッドから飛び降りて鞄の元へ駆け寄り、些か乱暴に開いた。
中身を手当たり次第床に放り出していく。
 
「……あった……!!!」
 
内側に作られた横に細長いポケットの中を探れば、一枚の封筒が出てくる。
上質な白の、金で縁取りされた封筒で、真っ赤なシーリングが施されている。
この封筒は、旅行中ルクラが拾ったものだった。
船の中で、誰かが落とした物。
正確には、ルクラの目の前で落とされた品だった。
 
――……! あ、あのっ! 落としましたよ!
 
慌てて拾い上げて、落とし主が去った方向に顔を向けたとき、既に其処には影も形も存在しなかった事を思い出す。
仕方が無いので封筒は、自分が預かっておこうと鞄の中にそっと忍ばせたのだ。
 
「……ごめんなさい、開けます」
 
本来の持ち主に謝りを入れて、封を切る。
果たして其処から出てきたものは――。
 
”これは日々退屈を感じている諸君への招待状。
 
 それは不思議な島の遺跡。島を出れば遺跡で手にした財宝は消える、しかし七つの宝玉があれば消えない、宝玉は遺跡の中。
島はエルタの地より真南の方向、素直に信じる者だけが手にできる財宝。
 
―――胡散臭いですかなっ?
 
ククッ・・・疑えば出遅れますよ、パーティーはもう始まっているのです。”
 
 
「……招待状……」
 
ルクラもまた、招待状を持つ一人だったのだ。
 
【4】
「ちょっと……なんですのこの散らかりようは」
 
老婆とのお茶会を楽しみ部屋に帰ってきたリズレッタだが、扉を開けるなり飛び込んできた状況に眉を潜ませた。
散らかってる現状が気に障るのは勿論だったが、普段のルクラがそんなに散らかすはずも無いことも知っていたので、少しの戸惑いもその表情には隠されている。
 
「無い……無い……!」
 
散らかした本人といえば、鞄を何度も覗き込み、ひっくり返し。
ますますリズレッタの不安感は高まっていく。
 
「……? ちょっと、きゃっ――!?」
「リズレッタ! 無いんです!」
「だっ……だから何がありませんの!? 無いだけじゃわかりませんわ!」
 
突然身体をがっしり掴まれて揺さぶられて、何がなんだか判らない。
尋常じゃないその慌て振りに、何時もの頬を抓る事すら忘れてリズレッタはルクラに揺さぶられるがままだった。
 
「杖が!」
「杖?」
「杖が無いんです! わたしの杖……『アスピディスケ』が無い!!!」
 
空っぽの鞄を指差すルクラ。
小さな円形の品が入るように内側に作られた特別なポケットには、今は何も無かった。 

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 【1】
戦いは圧勝に終わったと評するべきだろう。
巨大蟹の放つ、砂浜を引き裂く衝撃の波をリズレッタは軽々とあしらい、関節部への正確無比な斬撃を見舞う。
腕や足が切り落とされ、ついに見上げるほどに巨大な蟹は、たった一人の小さな少女に完膚なきまでに叩きのめされたのだ。
バランスを崩し、動かす足も腕も無くなった巨大蟹はその活動を止める。
恐る恐るといった様子で、ルクラがその胴体からゆっくりと降りる。
 
「リズレッタ!」
「全く……」
 
砂の上に着地して、駆け寄ってくるルクラを呆れたような表情で出迎えた後、リズレッタは未だにしぶとく生き残っている巨大蟹を一瞥し、そして――。
 
「目障りですわ、死に底無いが」
 
自分の背丈ほどの巨大な氷の剣を形成し、胴体目掛けて思い切り突き刺した。
腹から背中へ、甲羅を貫き通した剣は一瞬の間を置いて崩れ落ち、消える。
しかし与えた傷までは消えず、ぽっかりと縦に細長く空いた穴は残る。
今度こそ巨大蟹はその活動を停止させる。
……笑顔で。
 
【2】
ルクラにとってリズレッタは保護者のような物だった。
本人が望んだわけではないが、何時しかそうなっていたのだ。
個人個人で見れば、ルクラ自身も決して頼りない、情けない人物ではない。
だが、リズレッタはルクラ以上にしっかりとした性格であり、またその性格を裏付けるだけの技量を持っていたのだ。
リズレッタからルクラへの力の流れはあれど、その逆は決してない、そんな関係が何時しか二人の間には生まれていた。
 
「良い事? わたくしが付いているからといってあなたが警戒を解いていいという理由にはなりませんのよ。幾らなんでもわたくしに頼りすぎでしょう。気持ちが弛んでいますわ」
「……ごめんなさい……」
「謝るだけなら馬鹿でもできますの。……次に同じ事をしたら。容赦しませんわよ」
「は、はいっ!」
 
ルクラからすれば、その関係はあまり好ましくない。
世話を焼かれるのが嫌いというわけではないし、彼女の小言が嫌いというわけでもない。
そもそも無闇に世話を焼かせているのは自分の所為であるし、小言だって一々的を射ていた。
無闇にリズレッタに負担をかける自分が嫌だったのだ。
 
「よろしい」
 
小言を言い終わって満足したらしいリズレッタを見ながら、ルクラは改めて、自分の中の甘えを認識し、それをなんとか失くす様に意識する。
それぞれの思いはあれど、何だかんだでお互いに良い方面に働きかけているようではある関係であった。
 
「でっかい蟹さんだったんですね……」
「そうですわね」
「リズレッタ、知ってます? ……蟹のお肉ってすっごく美味しいんですよ」
「……ふぅん」
 
この少女、見かけによらずよく食べる。
普段は見せない物の、実は食い意地も張っている。
大きなボウル一杯に盛られた野菜サラダを殆ど一人で食べきってしまったときは、流石のリズレッタも眼を疑った物だった。
そんな彼女が、極上の素材がたっぷり詰まった超巨大な生物の死骸を前にして何もせず背を向けるはずは無いのだ。
 
「……やるならあなた一人でなさい」
「はい! 休憩しててくださいね、リズレッタ!」
 
しかしそんな性格を咎める事は出来ない。
リズレッタ自身もルクラのその性格の恩恵を確かに受けてはいるのだから。
彼女が美味しいと評した食べ物は、確かにリズレッタをも満足させるだけに値する物ばかりなのだ。
食事という行為が必要無く、ルクラと出会うまではリズレッタの中で”あまり意味の無い行い”だったそれは、今や楽しみの一つとなっていた。
それは”ルクラ=フィアーレ”という存在なくしては決して昇華し得ぬ物だったに違いなかった。
 
「……っ……」
 
嬉々として巨大蟹に駆け寄っているルクラを見送っていたリズレッタだが、突然ずきり、と頭の奥に鈍い痛みが生まれた。
その痛みに耐えかね、額を押さえて蹲る。
 
「あぁ……もう。だから嫌だったのですわ……」
 
【3】
巨大蟹との戦闘でリズレッタは命術を二度用いた。
何気なしに、ルクラと同じように使って見せた彼女だが、実はそのために大きな犠牲を払っていた。
本来彼女に命術を用いる力は存在しない。
彼女が用いる力の源は”水”と”氷”であり、そしてその力の行使の意義は”殺戮”の二文字であった。
”命を生かす術”が命術であり、いわばリズレッタのそれとは真逆の性質を持つ物。
使おうと思っても術自体が彼女を拒むのだ。
しかし彼女はその拒みすら乗り越えて、命術を使用した。
自らの力を触媒として捧げ、術の拒みを一時的に解除したのだ。
今彼女を襲うあらゆる不快感は、力を捧げ消失させた事による反動のような物だった。
 
――これでまた、元の力になるのに2、3歩遠のいたわけですわね……。
 
その行いは、身体的にも負担が掛かるのはもちろん、リズレッタにとっては精神的に苦痛だった。
命術という概念に賄賂を持って只管平伏して頼み込んだような物だったからだ。
彼女の中で最も大切とも言える自らの力を幾らか差し出し、胡麻を摺って揉み手をして一瞬だけ得た力は雀の涙程度で。
自尊心を傷つけるには十分すぎる結果であった。
 
――使わなければ良かった……と思いたいところなのだけれど。
 
不思議とこういう結果を招いたルクラへの怒りは湧いてこない。
先ほど口に出した言葉も、自分の身を襲う不快感をなんとか紛らわしくて出た様なもので、他意はなかった。
どころか、蟹の足を器用に解体してその身を透明なパックに――宿の老婆から貸してもらった保存袋で、”じっぷろっく”というらしい――詰め込んでいる彼女の姿を見て、胸をなでおろしている自分に気づく。
 
「………………」
 
慎重すぎる判断で、しかも愚策であったかもしれないが、ルクラが無事である事に何より落ち着いた気分である自分を見て、その行いを批判する事など、リズレッタには出来なかった。
”殺戮”を行使する少女は徐々に”救済”への道へと歩みを進めていた。
 
「リズレッタ?」
 
収穫を終えて戻ってきたルクラに声を掛けられ、リズレッタは我に帰った。
 
「……あぁ。もう良いの?」
「はい! こーんなに一杯!」
 
”じっぷろっく”六袋に詰められた新鮮な蟹の肉を見せびらかし、ルクラはにっこりと笑う。
 
「リズレッタはもう大丈夫? まだ休憩してもいいけれど」
「……もう十分ですわ」
「うん、よかった! さぁ、今度こそ帰りましょう? いいお土産も出来ましたし」
 
くるりと踵を返すルクラ。
 
「……ちょっと」
「はい?」
 
しかしすぐに呼び止められ、またリズレッタのほうに向き直る。
 
「――手を貸すぐらいなさい」
「……! は、はいっ!」
 
リズレッタからしてみれば、未だに頭痛やらで体が重いため、何気なしに注文しただけだった。
しかしそれはルクラにとって見れば驚くに値する言葉だった。
今まで何をするにしても決してルクラの力は借りず、自分一人で何もかもをやっていたリズレッタが、初めてルクラに力を貸すように頼んだのだから。
お互いの関係は、此処に来てゆっくりと、しかし確実に変性を起こし始めていた。 

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 【1】
きょろきょろと砂浜を見渡しながら歩く。
ところどころ無造作に突き出た大岩の裏もしっかりと見て周り、それを繰り返す事数度。
 
「……あっ!」
 
何かに気づいたかのように声を上げて、岩の中にぽっかりとあいた小さな穴の中に身体を突っ込んでしばらくもぞもぞ動いていたかと思うと、ルクラは一つの木箱と一緒に穴から出てきた。
 
「見つけました!」
「……それが目当ての品ですの?」
「きっとそうです!」
 
誇らしげに高く掲げたそれをリズレッタは興味無さそうに見やり。
興奮に突き動かされ木箱を開けようとしているルクラをじっと眺めている。
木箱は思いのほかあっさりと開いた。
 
「……わぁ……!?」
 
そしてその中には、暗闇が詰め込まれていた。
見渡す限りの黒一色、光すら飲み込む闇である。
ルクラは、その闇に恐れることなく手を触れた。
これこそが捜し求めた宝だと確信を持って手を差し伸べたのだ。
指先が闇に触れた途端、それは形を変える。
小さな盾だ。
 
「……ほら!」
「……ふぅん。闇の盾、ですの」
「これで合成して……もっと便利なアイテムを作れます!」
 
使用者に合わせて最適な形を取る闇の防具、シャドウバックラー。
手に入れたそれを背中にくくりつけて、ルクラは満足そうな笑みを浮べた。
 
【2】
 
「第一回『お宝発掘しまショー』。ぱちぱちぱち」
 
そんなメルの掛け声から始まった今回の単独行動。
砂浜のあちこちに宝があるらしいが、分担して探す方が効率的だろう、という事で今回は皆分かれて探索を開始していた。
思い返せば、パーティを離れ個人行動をするようになったのはルクラにとっては久しぶりで、なんとなく、自分がこの島に来てすぐの事を思い出すきっかけになる。
 
「……ふふ」
「なんですの、いきなり笑い出して」
「え? ……ううん。リズレッタが居てくれて、嬉しくって」
「……?」
 
ぱんぱんと服に付いた砂を払い、打ち寄せる波を眺めながらルクラは続ける。
 
「初めてこの島に来て、遺跡に入ろうとしたときはすっごく怖かったんですよ。
 遺跡っていうと、どうしても暗くてじめじめしてて……そんなイメージがあって、おっきなカンテラまで準備したっけ。
 結局使わずじまいだったけど、あの時のどきどきは今でも忘れられないです」
 
盛り上がった砂山に登って腰掛けて、続ける。
 
「料理も、テント張りも。……戦いだって。
 みんなみんな、自分ひとりでやってました。
 ……色んな発見もあったし、楽しかったですけれど、でもやっぱり」
 
リズレッタを見下ろしつつ、続ける。
 
「寂しかった。
 怖かった。
 何度遺跡の探検を放り投げて、おばあさんの所に逃げ帰ろうと思ったか覚えてないぐらい。
 一人ぼっちは、嫌だったんです」
「……ふぅん」
「さっき、ちょっと考えたんです。
 もしリズレッタが居なかったら、今わたしは一人でここを探検している。
 これが終わればまた、皆と合流できるけど、でも……。
 一人でここをちゃんと探検できたのかな、って」
「………………」
「リズレッタ」
「……何か?」
「ありがとう、一緒に居てくれて」
 
寂しそうな笑顔は何時しか、湿っぽい要素など吹き飛んでしまった笑顔になっていた。
見上げていたリズレッタが、顔を赤らめてそっぽを向く程度に明るい笑顔に。
 
「……ふ、ふん。意味がよくわかりませんが、まぁいいでしょう」
「うん、ごめんね。……でもありがとう」
「あぁ、もう。意味も無く礼を言うんじゃありませんわ」
「うん」
 
はにかんだ笑みはそのままに、ルクラはリズレッタを暫く眺め。
 
「……よし、それじゃあもどろっか。皆もう遺跡の外で待ってるかも――!?」
 
砂山から飛び降りようとした、その時だった。
 
【3】
 
「わ、わっ……!?」
 
動いた。
砂山が、動いている。
 
「……! これは……!」
「リ、リズレッタ!」
 
勢いよく砂を弾き飛ばし現れたのは、巨大な蟹だった。
 
「どどど、どうしようっ!?」
「振り落とされないように捕まっていなさい」
 
硬い殻を持つ相手で厄介だが、やるしかない。
そうでなければ、ルクラは――。
 
「きれいなこー。すきだなー」
「ちょ、ちょっとー!?」
 
蟹にお持ち帰りされてしまう。
というか、されかけている。
 
「待ちなさい」
 
そんな蟹の目の前に立ちふさがるリズレッタ。
氷のナイフを既に構えて、不適に笑う。
 
「お前のような下衆には勿体無い娘ですわ」
「なにー? じゃまするー?」
「……お前にはそんな娘より、もっと良い物を差し上げますわ」
「ザシューっといっちゃうよー!!!」
 
蟹が鋏を振り上げた。
 
「『冥土の土産』を、ね?」
 
くすくす、という笑い声が響く。

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【1】
「……気分は落ち着きまして?」
「は、はい。……なんとか」
 
目尻に残った雫を指先で拭い取り、ルクラは鼻をずるずると鳴らしながらも、漸く気分を落ち着けたようだった。
一体その小さな身体の何処からあれだけの量の涙を流せるのか、そう思えるほど今リズレッタの服の一部は湿っている。
鼻水だけは逐一離れて鼻をかんで処理して、また胸に顔を埋める、と面倒な手順をルクラが踏んでいたお陰で一つも付いていないのが幸いか、とリズレッタは小さくため息を吐き出した。
怒る訳にはいかない。
風に当たれば直ぐ乾くだろうし、跡にもならないような些細な物でもあるし、それに。
 
「あぁ……すっごく泣いちゃった。なんでだろ……」
 
再び鼻をかんでいるこの泣き虫少女を、リズレッタはぼんやりと眺め、先ほどの夢の中での出来事と照らし合わせる方が、彼女を怒るより重要な事だったのだ。
 
――何故……。何故、わたくしは……この子の事を思い浮かべたの……? 誰かに助けを請うなんて……こんな相手に助けを請うなんて、何故?
 
「……鼻水止まんない……」
「……ほら」
「あ、ありがとう」
 
未だにずーずーと鼻を鳴らすルクラに、リズレッタはポケットの中からちり紙を取り出し手渡した。
お礼をちゃんと言って――何時ものような丁寧なものではないが、寧ろそれが見た目通りで違和感はあまり無い――ルクラは思いっきり鼻をかむ。
何時も携帯している小さなゴミ袋の中にそれを放り込んで、人心地付いたと言わんばかりに息を吐き出して見せた。
それからリズレッタを見やる表情は、やはり心配そうな表情で。
 
「……リズレッタ」
「……なんですの」
「勝手に他所にいっちゃ、だめなんですよ。何があるかわからないんだから……」
「少し……考え事をしたかっただけですわ」
「……何か、困った事があるの?」
 
リズレッタは言葉に詰まった。
本当にこの少女は何時もこうだ。
鬱陶しく感じられた事も一度や二度では済まない。
 
「別に何も――」
「だったら何で勝手に抜け出したりしたの?」
「それは……」
「本当に、何も無かったの?」
「………………」
「眼を逸らさないで話して」
「だから、何も無いと言っているでしょう?」
 
しかも誰かに恩を売ろうという八方美人的思考から来る物ではないため、リズレッタにとっては尚性質の悪い物だった。
呆れるほどこの少女は、純粋な心に満ちている。
しつこく問いただすルクラを、リズレッタは睨みつけた。
暫くの沈黙が二人の間に敷かれる。
 
「……わかりました。でも――」
 
先に破ったのはルクラだった。
 
「もうこんな事はしないで下さい。……何があるか、判らないから」
「雑魚が何匹来ようがわたくしには――」
「約束して」
 
じっとリズレッタを見つめるルクラの瞳には、力強い輝きが宿っている。
有無を言わさぬ気迫が、発せられている。
 
「……はぁ」
 
これ見よがしにリズレッタはため息をついて。
 
「わかりましたわ、約束しましょう」
 
不服であるという素振りは隠そうともせず、答えた。
 
「……ありがとう、リズレッタ」
 
それでもルクラは安心したようにふんわりと笑みを浮かべる。
その様子にリズレッタはもう一度ため息をついた。
 
「……リズレッタ。何時でも相談に乗りますからね? 夜中でも、わたしを起こしてくれても構いませんから」
「だから何も無いと言っているでしょう……? ……全く、どうして其処まで。理解に苦しみますわ」
「わたしにもわかんない。
 けど……困ってる人、悲しんでる人……見逃せないんです。何とかしてあげたいんです。
 わたしでよかったら、何時だって力になりますよ。
 ……さ、帰りましょう? そろそろ寝ないと、寝不足になっちゃうかもしれませんし」
 
キャンプへと戻ろうと、ルクラはリズレッタの手を取り引っ張った。
少し力を込めて引けば、リズレッタも同調してついて来てくれるだろうと予想しての行動。
しかし意に反して、引っ張った手からいくらかの抵抗感が生み出された。
 
「……リズレッタ?」
 
ルクラは不思議そうな顔をリズレッタに向け、そして彼女が眼を見開いて硬直しているのに気づく。
 
「どうしたの?」
「……もう少し、散歩に付き合いなさい」
「えっ」
 
今度はルクラの手がリズレッタに引っ張られる。
踏み留まる事もできず、為すがままに草原を連れ回される。
 
「ちょ、ちょっとリズレッタ」
「いいから、黙ってついてくればいいのですわ」
 
【2】
月明かりの下、リズレッタはルクラの手を引いて、あてのない散歩を続ける。
手を引っ張っているのが自分ではなくルクラで、草原に雪による薄化粧が施されていたら、”あの時”の状況そのままだ、とリズレッタは思った。
同時に脳裏に蘇るのは、”あの時”の出来事。
自分がこうして、彼女に付いていくようになったきっかけ。
 
――わたくしは、あの時……。
 
殺そうと思っていた。
姉妹ごっこという戯れは終わらせて、馬鹿みたいに自分に付き従い世話を焼くこのお人好しの少女に、最後の最後に絶望を味わわせて首筋を切り裂いて、それで終わりだと思っていた。
しかしこの少女は生きているし、自分も彼女の探検に同行している。
 
――鬱陶しいぐらい、苛々するぐらいにお人好しなこの娘の言葉に、何もかも狂わされた。不愉快な筈なのに。わたくしのしようとする事をどんな手段であれ邪魔をするような連中は、殺すに値する筈だったのに。それなのにわたくしはあの時……。
 
情に絆された、言い表すならそれが最も近い表現。
全く予想もしなかった”あの時”のルクラの言葉に大いに心を揺さぶられ、取り乱した自分に掛けられた彼女の言葉によって生み出されたある感情に、屈したのだ。
 
――この娘と行動を共にするようになってから、何かが可笑しい。話すだけで、見ているだけで……一緒に居るだけで、何故こんなにも心が安らぐの。
 
依存しているのだろうか。
かつて妹が傍に居ないと安らげなかったように、この娘が傍に居ないと自分は安らげなくなっているのだろうか。
それは何故か、そう考えればやはり”あの時”掛けられたルクラの言葉が原因ではなかったのだろうか、とリズレッタは考える。
立ち止まり、そしてルクラの方へ向き直る。
 
「……ねぇ」
「はい?」
「何か、思い出しませんの?」
「え……?」
「あの時もこうして、二人で草原を歩いた。……思い出せないの?」
「………………」
 
ルクラは困ったような表情で、首を横に振った。
 
「……そう」
「ごめんなさい……」
 
彼女は”あの時”の事をすっかり忘れていた。
リズレッタにその原因は判らない。
自分自身を否定され、一種の洗脳を施され、挙句に死の恐怖を味わわされたという事実を、彼女の脳がすんなりと記憶の棚の中に仕舞うはずが無い事など、判らなかった。
一種の自己防衛として、彼女の頭の中で”あの時”の記憶は、厳重に封をされて仕舞われていることなど、想像すらできなかったのだ。
 
「……じゃあ、一つだけ聞きますわ」
「はい……?」
「あなたにとっての、『優しさ』とは何?」
 
当り散らしても思い出さないことは十分に判っていた。
だから、たった一つだけルクラに聞く。
あの時自分に掛けた言葉が偽りでないことを確かめるために。
ルクラはあまり考える様子も見せず、答えた。
 
「みんな笑顔で居られるように、手を差し伸べる事です。
 困ってる人、悩んでる人、悲しんでる人……少しでもそんな人の力になるために。
 ……お節介だって思われるかもしれない、大きなお世話だって言われるかもしれない。
 でも、嫌なんです。見て見ぬふりをするのは絶対に嫌。
 だからどんなに難しい悩みでも、一度その人に手を差し伸べたら、どんな事があっても最後まで一緒に居る。
 ……それがわたしの信じる『優しさ』、かな」
「……そう」
「リズレッタも……さっき言ったけど、本当に何時だってわたしは相談に乗りますからね? 
 わたしはリズレッタの力に何時だってなります。これからもずっと。だから――」
「帰りますわよ」
「えっ?」
 
言葉を遮り帰る、と言った所為か、ルクラはきょとんとした表情を見せた。
 
「……二度も言わなくたってわかりますわ」
 
しかしこの言葉に、ぱっと笑みを咲かせて頷いた。
 
「……うん」
 
再びリズレッタはルクラの手を引いて草原を行く。
今度は自分達のキャンプへ戻るため、迷いの無い足取りで。
”あの時”と全く変わらぬルクラの『優しさ』の定義を聞き、リズレッタは満足だった。
今日はよく眠れそうだと僅かに微笑を浮かべて、そして驚く。
 
――本当に……この娘の所為で、滅茶苦茶ですわ。
 
ルクラに聞こえないようにこっそりとため息を吐くものの、その表情は変わらぬ微笑だった。

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 【1】
納得がいかない。
満足できない。
己の無力さに苛立ちすら覚える。
 
――覚悟はしていた。……でも、ここまでとは……っ……!
 
「その辺のゴミでも漁っていれば良い物を……」
 
倒れ伏し、その姿を巨大な牙へと変えた狼を睨みつけ、吐き捨てるように呟いたリズレッタの胸の内は、穏かなものではなかった。
 
「リズレッタ?」
 
ルクラに声を掛けられ、リズレッタは自分がずっとしかめっ面をして居ることに気づき、そっぽを向いて答える。
 
「……なんでもありませんわ」
「でも――」
「なんでもないと言っているでしょう? 二度も同じ事を言わせないでくれるかしら」
 
直ぐに平静を装い、つんと澄ました顔を見せる。
ルクラは納得のいかない――それは”不満”というより”心配”という感情で埋め尽くされているようだが、今のリズレッタにとっては鬱陶しいだけだ――様子を見せるが、それ以上聞いてくることはなかった。
 
「……何かあったら、何時でも相談に乗りますからね」
 
そんな言葉にも軽く手を振って応える。
耳の周囲に纏わりつくそれを払うような動作も兼ねていたが。
 
――……ふん! 誰がするものですか!
 
心の中でルクラの言葉を鼻で笑い飛ばし、リズレッタはキャンプの準備を手伝いに走る彼女の後ろ姿を見ながら歩き出した。
 
【2】
皆が寝静まった夜更け、一人キャンプから抜け出しあての無い散歩。
靴が平原の草を踏みしめる音と、傍を柔らかく通り抜ける風の音を聞きながら、リズレッタはただ歩く。
 
「………………」
 
人は勿論、小動物や、植物も。
誰もが皆寝静まっている。
静かな夜だった。
ふと横目に見やると、巨大な岩が鎮座しているのを見つける。
無意識のうちに足が向いて、それに腰掛けた。
視界に動くものは何一つ見えない。
誰にも邪魔される事の無い、考え事をするには最高の環境に自分がいる事を実感できる。
 
――思った以上に、力は失われていますのね……。
 
思い返すのはあの狼達と一戦交えて実感した事。
精々一度に二本までしか生成できなかった氷のナイフ。
動きの鈍い身体。
あの程度の雑魚相手にも手間取ったというのは、リズレッタの自尊心を大きく傷つけたと言っても過言ではない。
 
「……ラズレッタ……」
 
膝を抱え込み、顔を埋めて呟くのは妹の名前。
久しぶりに口に出した――今まで出せるような環境に無かったというのもあるのだが――その名前は、やはり心の喪失感を痛いほど刺激するもので。
思いは更に過去へと遡り始めたのだった。
 
【3】
”人斬り”と呼ばれる連中が居る。
遺跡内で他の冒険者に襲い掛かり、力で打ち負かし、金品を奪い取る人々の事だ。
大多数の冒険者によっては忌み嫌うべき存在である。
だが、そんな悪名高い彼らも遺跡外では大人しいものだった。
遺跡外での略奪・暴行行為は禁止されているのは、この島に訪れた冒険者なら誰もが知っている常識だ。
その影響力は凄まじく、どんなに凶悪な連中でも――悪事千里を走る、との言葉通りで、情報が島に広まるのは驚くほどに早い――遺跡の外に出れば必ずそのルールに従っている。
誰もが枕を高くして安心して眠れる、絶対のルールにより作られた安全地帯、それが遺跡外なのだ。
しかし、それを破った二人組がかつて存在した。
 
【4】
「お姉さまああああああ! 熱い、痛いよお姉さまあああああッ! 助けてッ! 助けてくださッ――――――」
「ラズレッタ――!!!」
 
自分の目の前で、光の奔流に飲まれ、断末魔の叫び声を上げながらラズレッタが消滅する。
一瞬にして消えうせた妹の姿をぼんやりと眺めるリズレッタに迫るのは、彼女達を”討伐”するためにやってきた冒険者達。
男が、リズレッタに向かい巨大な剣を振るった。
 
「ギッ――!!!」
 
成す術も無く、胴体を横薙ぎに断ち切られ、リズレッタは血溜まりの中に伏せる。
痛みは感じない、ただ噎せ返るような血の香りとともに倦怠感が全身に纏わりつく。
 
――これは……。
 
夢だ。
色々考え込んでいるうちに、まどろみの中に自分の意識を引き込んでしまったらしい。
思い出したくも無い、リズレッタにとっては忌々しい、夢だった。
 
「ヒ……ヒッ……!!! うふふ……あはは……!!! キヒヒ……ヒヒ……!!!」
 
地面に転がっている自分は、笑っていた。
胴体と共に斬られた左手を見て、残された右手で自分の眼を覆い隠し、只管に笑っていた。
 
「あぁ、今日は全く最悪の日……!
 こんなに良いように弄ばれて、この体たらく……うふふ……ごほっ……!
 なんて無様なのかしら……ね……ぇ……!
 あは……ごぼっ……ぅえっ……ヒヒヒヒ……」
 
笑い続ける自分の周りに、冒険者達が集う。
リズレッタはその光景を見て、眉を潜めた。
この後に行われたやり取りは、今思い返しても屈辱に顔を歪めるほどの事だったからだ。
 
「ィッ…………アアッ……ッガ……!!!」
 
――……え?
 
冒険者達は無言で、自分の身体に自分達の武器を突き立て、叩きつけていた。
苦しみもがく自分を、何度も何度も、渾身の力で攻撃している。
 
――違う……これは……違う! そんなはずは!!!
 
あんな事は無かった。
冒険者は自分に止めを刺すことなく、見逃したのだ。
だからこそ自分は殆どの力を失いつつもその命を繋ぎ逃げ延び、ここに居るのだ。
そのはずなのに。
 
「…………ッ……!!!」
 
助けを求めるように突き出した右手ごと顔面を貫かれ、夢の中の自分は痙攣を起こし、そして動かなくなった。
血に塗れた冒険者達は、暫くそれを眺めていたが――。
 
「ヒッ……!?」
 
一斉に振り返った。
そして武器を構え、ゆっくりと近づいてくる。
気が付けば、リズレッタは草原に立ち尽くしていた。
目の前で凄惨な死に様を晒している自分とは違う、メイドのような格好をした自分が夢の中の世界に立っている。
 
「ち……がう……こんなの……! いや……!!!」
 
リズレッタは初めて、恐怖を感じていた。
今まで受けるものではなく、自分が他者に与えるはずだった感情を、嫌と言うほど味わっていた。
身体はピクリとも動かない。
夢の中の自分を横薙ぎに断ち切った男が剣を大上段に構えた。
 
「い……や……いや……! たすけ……て……たすけ――!!!」
 
ぎゅっと眼を瞑り、リズレッタの瞼の裏に浮かび上がった姿は――。
 
【5】
「リズレッタ! リズレッタってば!」
「っ!?」
 
がくがくと身体を揺さぶられ、リズレッタの意識は急激に覚醒する。
視界一杯に広がっている空は真っ暗で、星が輝いて見える。
そんな視界の中に飛び込んできたのは、ルクラの顔だった。
今にも泣きそうな表情で、なんとも情けない。
 
「リズレッタ……!!!」
「あ、なた……どうして……」
「ちょっと眼が覚めたら……リズレッタが居なくって……! わたし、わたし心配で、探しにでて……! け、怪我はないですよね!?」
「え、えぇ」
「もお……! よかったぁ……!!!」
「ちょ、ちょっと、泣くのは止めなさい……!」
「だって、だってぇ……!」
 
しっかりと自分を抱きしめて、胸に顔を埋めてぐすぐす泣き始めたルクラを、リズレッタは何時ものように叱る事などできなかった。
 
――……何故……。
 
夢の中で恐怖に眼を閉じたとき、瞼の裏に浮かび上がった人物をただ眺めるしか、できなかったのだった。

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