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六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
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 【1】
きょろきょろと砂浜を見渡しながら歩く。
ところどころ無造作に突き出た大岩の裏もしっかりと見て周り、それを繰り返す事数度。
 
「……あっ!」
 
何かに気づいたかのように声を上げて、岩の中にぽっかりとあいた小さな穴の中に身体を突っ込んでしばらくもぞもぞ動いていたかと思うと、ルクラは一つの木箱と一緒に穴から出てきた。
 
「見つけました!」
「……それが目当ての品ですの?」
「きっとそうです!」
 
誇らしげに高く掲げたそれをリズレッタは興味無さそうに見やり。
興奮に突き動かされ木箱を開けようとしているルクラをじっと眺めている。
木箱は思いのほかあっさりと開いた。
 
「……わぁ……!?」
 
そしてその中には、暗闇が詰め込まれていた。
見渡す限りの黒一色、光すら飲み込む闇である。
ルクラは、その闇に恐れることなく手を触れた。
これこそが捜し求めた宝だと確信を持って手を差し伸べたのだ。
指先が闇に触れた途端、それは形を変える。
小さな盾だ。
 
「……ほら!」
「……ふぅん。闇の盾、ですの」
「これで合成して……もっと便利なアイテムを作れます!」
 
使用者に合わせて最適な形を取る闇の防具、シャドウバックラー。
手に入れたそれを背中にくくりつけて、ルクラは満足そうな笑みを浮べた。
 
【2】
 
「第一回『お宝発掘しまショー』。ぱちぱちぱち」
 
そんなメルの掛け声から始まった今回の単独行動。
砂浜のあちこちに宝があるらしいが、分担して探す方が効率的だろう、という事で今回は皆分かれて探索を開始していた。
思い返せば、パーティを離れ個人行動をするようになったのはルクラにとっては久しぶりで、なんとなく、自分がこの島に来てすぐの事を思い出すきっかけになる。
 
「……ふふ」
「なんですの、いきなり笑い出して」
「え? ……ううん。リズレッタが居てくれて、嬉しくって」
「……?」
 
ぱんぱんと服に付いた砂を払い、打ち寄せる波を眺めながらルクラは続ける。
 
「初めてこの島に来て、遺跡に入ろうとしたときはすっごく怖かったんですよ。
 遺跡っていうと、どうしても暗くてじめじめしてて……そんなイメージがあって、おっきなカンテラまで準備したっけ。
 結局使わずじまいだったけど、あの時のどきどきは今でも忘れられないです」
 
盛り上がった砂山に登って腰掛けて、続ける。
 
「料理も、テント張りも。……戦いだって。
 みんなみんな、自分ひとりでやってました。
 ……色んな発見もあったし、楽しかったですけれど、でもやっぱり」
 
リズレッタを見下ろしつつ、続ける。
 
「寂しかった。
 怖かった。
 何度遺跡の探検を放り投げて、おばあさんの所に逃げ帰ろうと思ったか覚えてないぐらい。
 一人ぼっちは、嫌だったんです」
「……ふぅん」
「さっき、ちょっと考えたんです。
 もしリズレッタが居なかったら、今わたしは一人でここを探検している。
 これが終わればまた、皆と合流できるけど、でも……。
 一人でここをちゃんと探検できたのかな、って」
「………………」
「リズレッタ」
「……何か?」
「ありがとう、一緒に居てくれて」
 
寂しそうな笑顔は何時しか、湿っぽい要素など吹き飛んでしまった笑顔になっていた。
見上げていたリズレッタが、顔を赤らめてそっぽを向く程度に明るい笑顔に。
 
「……ふ、ふん。意味がよくわかりませんが、まぁいいでしょう」
「うん、ごめんね。……でもありがとう」
「あぁ、もう。意味も無く礼を言うんじゃありませんわ」
「うん」
 
はにかんだ笑みはそのままに、ルクラはリズレッタを暫く眺め。
 
「……よし、それじゃあもどろっか。皆もう遺跡の外で待ってるかも――!?」
 
砂山から飛び降りようとした、その時だった。
 
【3】
 
「わ、わっ……!?」
 
動いた。
砂山が、動いている。
 
「……! これは……!」
「リ、リズレッタ!」
 
勢いよく砂を弾き飛ばし現れたのは、巨大な蟹だった。
 
「どどど、どうしようっ!?」
「振り落とされないように捕まっていなさい」
 
硬い殻を持つ相手で厄介だが、やるしかない。
そうでなければ、ルクラは――。
 
「きれいなこー。すきだなー」
「ちょ、ちょっとー!?」
 
蟹にお持ち帰りされてしまう。
というか、されかけている。
 
「待ちなさい」
 
そんな蟹の目の前に立ちふさがるリズレッタ。
氷のナイフを既に構えて、不適に笑う。
 
「お前のような下衆には勿体無い娘ですわ」
「なにー? じゃまするー?」
「……お前にはそんな娘より、もっと良い物を差し上げますわ」
「ザシューっといっちゃうよー!!!」
 
蟹が鋏を振り上げた。
 
「『冥土の土産』を、ね?」
 
くすくす、という笑い声が響く。

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