六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
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【1】
「っ……!」
駆ける、止まる、飛ぶ、走る。
魔石は何度も光り輝き、キラキラと輝く小さな光弾も輝きと同じ数だけ発射されている。
「……ふ……ぅ……!」
相手がリコーダーを吹き鳴らすだけで、楽譜で見るような音符が形を持ち、ルクラへ向かって襲い掛かってくる。
時には打ち落とし、時には避け、そして時にはその身に音符を受けて。
防具を作成してくれたリレイバーリオン率いるパーティとの戦い、お互いに残りは一人。
遠距離攻撃手段に長けた二人による一騎打ちである。
避けた音符が、様々な色を持ってふよふよと辺りを浮き、目標に当たることなく弾け飛んだ光弾の塵が音符の周りを彩り、幻想的な光景が出来上がっていた。
【2】
「はぁ……はぁ……!」
動き続けたルクラの体力は最早限界だった。
魔石に力を込めて、放出するだけの単純な行動でさえ億劫に思える。
しかしルクラのその歩みの一歩一歩は力強く。
発射される光弾も力が衰えた様子を見せてはいない。
「まだ……まだぁ……!!!」
肩で息をしながらも、彼女は全力で動き、攻撃をする。
小さく可愛らしい外見の少女からは今、鬼気迫ると言っても過言ではないほどの気迫が発せられている。
「……!」
相手の奏でる音色に乱れが生じた。
音が飛び、不安定に高くなり低くなり、今まで静かに流れていた音楽が力強く、五月蝿く。
それは相手も疲労している何よりの証拠になった。
そしてルクラ自身は気づいていないが、彼女から発せられる気迫に相手が戸惑っているのもまた、音色が乱れた原因になっている。
――次で決める!
決着が近い事を予感したルクラは、相手に向かって全力で駆け出した。
予想外の行動だったのか、相手の顔には驚きの色がありありと見て取れる。
魔石を持った手を思い切り突き出し、それと同時に魔石が輝き。
――これで……!!!
瞬間――。
【3】
「……う、うぅーん……?」
「あ、起きた」
ルクラが次に見たのは、自分を覗き込むメルの顔だった。
「わたし……あれ……?」
「お疲れ様、るぅちゃん」
身体を起こして、周りを見渡す。
練習相手だったリレイバーリオン一行は既に居らず、メルトは少し離れた所で自分を見守っていたらしいスィンとエクトの姿だけがあった。
「れ、練習試合は……?」
「こっちの負け。……惜しかったんだけれどね」
「あと一発当たれば、という状況に二人ともなっていたからな」
「……そう、ですか。……負けちゃったんだ」
がっくりとうなだれたルクラ。
それを見て、メルたちはそのあまりの落ち込み振りに眼を丸くした。
「ごめんなさい、わたしがもうちょっと頑張ってたら……」
「そんなに気を落とさなくていいよ。負けても悪いことがあるわけじゃないんだから」
「それはそうですけど……」
メルの言うとおり勝っても負けても何も無いのだから、ここまで勝敗に拘る必要は無いのだ。
だが彼女は浮かない顔をして居る。
一体何がそんなに彼女の気分を沈めさせているのか、メルたちには皆目検討もつかなかった。
「だって……勝ちたいじゃないですか! 何にも悪いことがなくっても、やるなら負けるなんて嫌です!」
しかし、ルクラのこの言葉を聞いて、メルたちはあぁなるほど、顔を見合わせ心の中でぽんと手を打つ。
何事にも自分の理想、完璧を追い求める、それが達成できなければとてつもなく落ち込む。
つまり彼女は非常に一本気で、何事にも手を抜かない職人気質なのだ、と今までの彼女の様子を見てきた三人の意見が一致した瞬間である。
「……どんな勝負にも勝ち負けは存在するわ」
暫くの沈黙を破り、エクトが口を開く。
「どれだけ勝ちたいって思っていても、負けるなんてよくあること。相手も全力でこちらと戦って、『勝ちに来ている』んだから。今回の勝負は実力じゃなくて運で負けている気もするけど、それもこういう言葉があるじゃない、『運も実力のうち』」
言われている間にルクラには悔しさが蘇ってきたのか、目尻に涙が輝き始める。
エクトはルクラに手を差し伸べた。
「負けるのは嫌、それだけじゃあだだをこねているのに変わりない。負けて悔しかった気持ち、申し訳なかった気持ち、次の戦いに生かさないと。それでも負けるかもしれない。じゃあそこでまた悔しかった気持ちや申し訳なかった気持ちを次の次の戦いへ生かして。……強くなるってきっとそう言うことだと思うわ」
「………………」
「もう立てる? 大丈夫なら、次の戦いで負けないように、強くなるために探検続けましょうか」
ルクラは涙を腕でごしごしと拭い、そして――。
「……はいっ!」
笑顔で元気のよい返事を返し、エクトの手を取った。
【4】
「少し驚きました、姫」
「あら、どうして?」
「……いえ、他者に物を説かれる姿を見たのは、初めてだったもので」
襲い掛かってきた野犬の群れを撃退したあとの小休止。
乱れた息を整えながらスィンとエクトは、メルとルクラから少し離れた場所で会話をする。
スィンの言葉にエクトは微笑んだ。
「朝練のおかげよ」
「え?」
「負けてる数はきっと彼女より多いから」
「……あぁ」
なるほど、とスィンは呟き。
「そろそろ行くよー」
「出発ですよー!」
メルとルクラの声に反応し立ち上がり、エクトにすっと手を差し伸べて見せた。
「っ……!」
駆ける、止まる、飛ぶ、走る。
魔石は何度も光り輝き、キラキラと輝く小さな光弾も輝きと同じ数だけ発射されている。
「……ふ……ぅ……!」
相手がリコーダーを吹き鳴らすだけで、楽譜で見るような音符が形を持ち、ルクラへ向かって襲い掛かってくる。
時には打ち落とし、時には避け、そして時にはその身に音符を受けて。
防具を作成してくれたリレイバーリオン率いるパーティとの戦い、お互いに残りは一人。
遠距離攻撃手段に長けた二人による一騎打ちである。
避けた音符が、様々な色を持ってふよふよと辺りを浮き、目標に当たることなく弾け飛んだ光弾の塵が音符の周りを彩り、幻想的な光景が出来上がっていた。
【2】
「はぁ……はぁ……!」
動き続けたルクラの体力は最早限界だった。
魔石に力を込めて、放出するだけの単純な行動でさえ億劫に思える。
しかしルクラのその歩みの一歩一歩は力強く。
発射される光弾も力が衰えた様子を見せてはいない。
「まだ……まだぁ……!!!」
肩で息をしながらも、彼女は全力で動き、攻撃をする。
小さく可愛らしい外見の少女からは今、鬼気迫ると言っても過言ではないほどの気迫が発せられている。
「……!」
相手の奏でる音色に乱れが生じた。
音が飛び、不安定に高くなり低くなり、今まで静かに流れていた音楽が力強く、五月蝿く。
それは相手も疲労している何よりの証拠になった。
そしてルクラ自身は気づいていないが、彼女から発せられる気迫に相手が戸惑っているのもまた、音色が乱れた原因になっている。
――次で決める!
決着が近い事を予感したルクラは、相手に向かって全力で駆け出した。
予想外の行動だったのか、相手の顔には驚きの色がありありと見て取れる。
魔石を持った手を思い切り突き出し、それと同時に魔石が輝き。
――これで……!!!
瞬間――。
【3】
「……う、うぅーん……?」
「あ、起きた」
ルクラが次に見たのは、自分を覗き込むメルの顔だった。
「わたし……あれ……?」
「お疲れ様、るぅちゃん」
身体を起こして、周りを見渡す。
練習相手だったリレイバーリオン一行は既に居らず、メルトは少し離れた所で自分を見守っていたらしいスィンとエクトの姿だけがあった。
「れ、練習試合は……?」
「こっちの負け。……惜しかったんだけれどね」
「あと一発当たれば、という状況に二人ともなっていたからな」
「……そう、ですか。……負けちゃったんだ」
がっくりとうなだれたルクラ。
それを見て、メルたちはそのあまりの落ち込み振りに眼を丸くした。
「ごめんなさい、わたしがもうちょっと頑張ってたら……」
「そんなに気を落とさなくていいよ。負けても悪いことがあるわけじゃないんだから」
「それはそうですけど……」
メルの言うとおり勝っても負けても何も無いのだから、ここまで勝敗に拘る必要は無いのだ。
だが彼女は浮かない顔をして居る。
一体何がそんなに彼女の気分を沈めさせているのか、メルたちには皆目検討もつかなかった。
「だって……勝ちたいじゃないですか! 何にも悪いことがなくっても、やるなら負けるなんて嫌です!」
しかし、ルクラのこの言葉を聞いて、メルたちはあぁなるほど、顔を見合わせ心の中でぽんと手を打つ。
何事にも自分の理想、完璧を追い求める、それが達成できなければとてつもなく落ち込む。
つまり彼女は非常に一本気で、何事にも手を抜かない職人気質なのだ、と今までの彼女の様子を見てきた三人の意見が一致した瞬間である。
「……どんな勝負にも勝ち負けは存在するわ」
暫くの沈黙を破り、エクトが口を開く。
「どれだけ勝ちたいって思っていても、負けるなんてよくあること。相手も全力でこちらと戦って、『勝ちに来ている』んだから。今回の勝負は実力じゃなくて運で負けている気もするけど、それもこういう言葉があるじゃない、『運も実力のうち』」
言われている間にルクラには悔しさが蘇ってきたのか、目尻に涙が輝き始める。
エクトはルクラに手を差し伸べた。
「負けるのは嫌、それだけじゃあだだをこねているのに変わりない。負けて悔しかった気持ち、申し訳なかった気持ち、次の戦いに生かさないと。それでも負けるかもしれない。じゃあそこでまた悔しかった気持ちや申し訳なかった気持ちを次の次の戦いへ生かして。……強くなるってきっとそう言うことだと思うわ」
「………………」
「もう立てる? 大丈夫なら、次の戦いで負けないように、強くなるために探検続けましょうか」
ルクラは涙を腕でごしごしと拭い、そして――。
「……はいっ!」
笑顔で元気のよい返事を返し、エクトの手を取った。
【4】
「少し驚きました、姫」
「あら、どうして?」
「……いえ、他者に物を説かれる姿を見たのは、初めてだったもので」
襲い掛かってきた野犬の群れを撃退したあとの小休止。
乱れた息を整えながらスィンとエクトは、メルとルクラから少し離れた場所で会話をする。
スィンの言葉にエクトは微笑んだ。
「朝練のおかげよ」
「え?」
「負けてる数はきっと彼女より多いから」
「……あぁ」
なるほど、とスィンは呟き。
「そろそろ行くよー」
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メルとルクラの声に反応し立ち上がり、エクトにすっと手を差し伸べて見せた。
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偽島
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