忍者ブログ
六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
[8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16]  [17]  [18
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 忘れていた矜持
【1】
「では何故、あの子の傍にずっと居るのかしら……?」
 
老婆の言葉を聞いて、リズレッタの胸の鼓動は早く高く強くなった。
 
「……なんですって……?」
 
辛うじて絞り出した声はか細く、いつもの不敵な笑みは無く。
ただうろたえる少女が一人其処に居ただけだった。
 
「恩を返そうとは、思わないのかい……? あれだけあの子は、あなたに親切にしてくれているのに」
「……それは……」
「勿論あの子だって、お礼を目当てにそうしているわけでは無いわ……。ただ純粋に、助けたい、役に立ちたいと言う思いで誰にだって接してきている。あんなに小さな身体に……確固たる信念が眠っている……。頭が下がる思いね……」
「………………」
「あなたはあの子に……何かしてあげたのかい……? あの子が貴女にしてくれたことを、よく思い出して御覧なさい。……ただあの子の助けを身に受けて、尊大な態度で居続けて。……首をかしげる他ないのだけど、ねぇ……?」
「……ッ……!」
 
ふつふつと怒りが湧いてくる。
老婆に対してだ。
それを認識したとき、リズレッタは更に怒りを覚えた。
他人に言われて怒りを覚えるのは、自身も自覚しているからこそ。
そこで老婆に怒りを覚えるなどお門違いもいいところで、本当に怒りを向けるべきは、自分自身だった。
そのはずなのに老婆に怒りを向けてしまった自分に、今まで感じたことの無い苛立ちを覚えたのだ。
 
「強制は、できないわ……。それに、あの子に言うほど勇気も無い……。あの笑顔が無くなってしまう事は、今の私にとっては息子夫婦や孫をを亡くしてしまう事に等しいぐらいに、悲しいことだからねぇ……」
「………………」
 
がたり、と音を立てて椅子から立ち上がる。
心配そうに自分を眺める老婆の顔は見ることができなかった。
酷く自分が恥ずかしい存在に思えて、とても他人の顔など見れる状況ではなかったのだ。
 
「……出かけてきますわ」
「……えぇ、いってらっしゃい……。お夕飯はもう直ぐですから、なるべく早めに――」
 
勿論言葉など最後まで聞けるはずも無かった。
一刻も早く一人になりたかった。
宿から出て、懐から取り出し乱暴に鳴らした鈴は、リズレッタを霧に包み込んでくれる。
そして霧が晴れた時、リズレッタの姿はもう無かった。
 
【2】
鈴の音を響かせ辿り付いたのは、妖精の宿。
此処でならどれだけ長い時間居ても、元の場所では数十分程度の時間経過にしかならない。
静かに一人、物事を考えたいリズレッタにとっては、最適な場所といえた。
 
「……これは……」
 
しかし誤算が一つあった。
記憶の中にあった白一色の冷たく寂しげな庭は消え、今や賑やかな桃色が乱舞する場所へと変貌していたのだ。
見た目に五月蝿いその光景にリズレッタは眉を潜める。
目の前の大樹を見上げれば、枝一本一本を包み込むように咲き乱れる花々。
見事な狂い咲きである。
しかし、リズレッタにとっては鬱陶しい存在に他ならなかった。
あの大樹の枝に腰掛けようと思っていたのがこれでは、木の枝に登ることすら儘ならない。
まさかあの咲き誇る中に身体を突っ込んで、枝に腰掛けて……など出来るはずも無い。
”はしたない”行いをするはずが無かった。
何処か抜け道でもないかと大樹の真下まで歩いて行き、その幹に手を付いてそっと見上げるが、やはり同じことだった。
とてもすんなりと中に入れてくれる様子は無い。
 
「鬱陶しい……」
 
憎らしげにそう呟いても入り口が出来るはずも無い。
仕方なく、大樹の根元に腰を降ろす。
よく見れば地面には散った花が一つも残っていない。
どころか、自分の体に触れた花びらも消えていく。
相変らず奇妙な場所だ、そう思いながら暫く、花が散るさまを眺めていた。
 
「………………」
 
今頃ルクラは、機嫌よくダンスパーティを楽しんでいるのだろうか。
あんなのに舞踏会などという優雅な催しが似合うはずが無い、と思いかけ、招待状の歪な姿を見てあぁやはりあの娘にこそお似合いか、と思いなおす。
自分が思うような舞踏会ではないのだろう。
それっぽく仕上げただけの紛い物に違いない。
 
「……ふん――」
 
笑みが零れた。
 
「………………」
 
何故だか酷く、自分が惨めに思えたのですぐ押し留めた。
 
「あの娘が、わたくしにしたこと、か――」
 
膝を抱えて座り込む格好に直して、呟く。
 
「――全く。何故、あそこまで他人に尽くすことができると言うのかしら。……理解し難いですわ」
 
理解できない、それはリズレッタにとっては便利な言葉。
自分に合わないものは全て切り捨てて、見下して、自分をずっと優位に立たせる魔法の言葉だった。
 
「……理解なんて」
 
それが今や、どうだ。
呟くだけで、まるで自分が時代遅れで、何もかもに置いていかれるような孤独感をもたらす忌々しい言葉となっている。
 
「……理解……」
 
判っているのだ。
もう聞かない振りなど出来ないほど、内から聞こえる自分の声は叫んでいる。
受けた恩は報いるべきだ、と。
リズレッタは強大な存在だった。
しかし今は違う。
最早権威は地に墜ちた。
 
「……理解、できない。……いや――」
 
判っていたのだ。
自分が意地を張って、ルクラに何一つ恩を返すまいとしていたことなど。
ただ助けを受けるだけのぬるま湯に漬かりきっていたのだ。
そしてそれを、自分は恥と思わなかった。
ルクラを言い訳の材料にして、今までずっと――。
 
【3】
 
「――理解しようとしなかった、ですわね」
 
もう止めだ、そう自分を叱りつける。
 
「……全く、何という無様な姿。
 自身こそ最上位だと誇っていた誉れ高き姿は何処へ消えたのかしら」
 
呆れた声でそう投げかけた相手は他でもない自分自身。
ゆっくりと立ち上がり、大樹と向き合い、眼を閉じる。
 
「力を失くしたとて、その誇りは消えず。
 わたくしの誇りは力のみにあらず。
 あらゆる、全てが、何よりにも勝るからこその最上位。
 下賎に施しを受けたのなら、それに見合った褒美を与えるのは上に立つ者の義務に他ならぬ。
 ただ施しを受け続けるだけなどという、最低の行為に身を染めるなど、在ってはならない。
 ……あんな小娘一人の施しなど」
 
――。
 
「――直ぐに。
 直ぐに目も眩む様な褒美を与えてやりましょう。
 わたくしはあらゆる者の頂点に立つべき存在なのだから」
 
そうでなければ、妹に示しがつかない。
頂点を仲良く二人で分け合った片割れはもういない。
残された自分が、今まで以上に、眩いばかりに輝き続けなければならないのだ。
今まで自分が忘れていた物、それは矜持だった。
だがもう、二度と忘れることは無い、手放すことは無い。
そんな事があれば、最早自分に価値など無い。
 
「……ふふ」
 
再び大樹を見上げたリズレッタは、薄く笑みを浮かべていた。
鬱陶しかったはずの咲き乱れる花々が、美しく輝いて見える。
あれは自分を楽しませる舞台衣装なのだ。
もっと、もっと美しく咲け。
 
「――――」
 
笑みを浮かべるリズレッタの瞳には、力強い光が宿っていた。

拍手[0回]

PR


 ○『ラブラブ!』で二票を確認していたのにうっかり忘れていました。

・ 「愛されてる娘だと思いますよ。むしろ、愛してます」

仰るとおりいろんな方々に愛され可愛がられてる子だと思います。
よく撫でられて妹にしたい、姉にしたい、嫁にしたい、家族にしたいなど色々な声が!

・ 「愛されてる娘だと思いますよ。むしろ、愛してます

よろしい玉砕の道を歩んでください。
絶賛お婿さん候補を募集していないぞ!

1割ほど冗談です、これからもよろしくお願いします!
もっと色んな人と交流できればいいなぁ。


・ 「あの二人はもう、らぶらぶ(あえてひらがな)だと思うの」

ルクラが押して押して押してリズレッタが受けて受けて受けて、ですよね。
稀に逆転するけれど。
本人達に自覚は無いけど傍から見れば相当らぶらぶな雰囲気を醸し出しているんじゃなかろうか、と思うときがあります。
ひらがななのはプラトニックだからというか、一般で言う”ラブラブ”とはちょっと違う”らぶらぶ”だからだと解釈しました!
微笑ましい”らぶらぶ”が何時までも続きますように。

以上二票、しっかりと噛み締めさせていただきました。
ありがとうございます!

○お母さん

rukuramam.jpg








 

ラフだったお母さんの絵に色がつきました!
表情やささやかにある胸や太ももに目が行きがちですが一番色気を感じるのは露出してる背中だと信じて止まない今日この頃です。
恐るべし37歳学校給食のおばちゃん……!
こんな美人さん嫁にしたおとんが羨ましいという声が聞こえてきそうです。
色塗りは勿論ラフを描いてくれた夏苛 椙璃さん(735)です。
この場を借りて改めて御礼申し上げます!

拍手[0回]


○アイコン、台詞はばっちりだった

しかし通常戦設定壊れた。
……抜けてる、たるんどるっ。
そもそもSP50%に下げる設定になってなかったのに気づけなかったというお粗末な結果。
金枝魔石無かったら確実に誰か落ちてますよねこれ……。

○とりあえず

通常戦は無事に勝利を収めました。
でも事態はまったく好転していない……。
少しでもHP残して多めに保ってサンゴに行こうと考えていたのが設定壊した所為でパァです。がくり。

○練習試合も

無事に勝利。
装備差もありますし、持久0の人がいたりで相当有利だったのでこれは勝ちを譲っていただいた感じです。

○闘技スタート!

始まりました闘技大会。
今度こそおこさまたんけんたい! の面々はおこさまたたかいたい! として出場しました。
一回戦勝利と幸先のいいスタート。
低消費SPを回して持続的な火力を……なんてすっ飛ばして酷いSP消費の設定にしてました。
一個除いてHP吸収系にしていたので妙にタフな魔法使いに。(狙い撃ちされてたのですが結局ギリギリで生き残れてた)

次回のお相手はー。

……台詞考えよう。いいネタ無いかな(遠い目)

○次回のお相手(通常戦)

サンドゴーレム×2
チープゴーレム×2

今回の冒険の最大の山場。
果たして勝利できるか!

……しなきゃいけないんだ!

○今回の必殺技

スウィートドリーム
6392e0c8.jpeg




妹の魔術を見よう見真似で。
妹の扱う魔術はそのどれもが難解なものであり(見てもよくわかんない魔術が多い)今回使ったのはその中でも比較的イメージが楽なお菓子の世界を具現化することでした。
詠唱が何時もと違うのは、なるべく妹の気持ちでやってみようと思ったから、だとか。

レヴィ・ディンメモリー
8c233749.jpeg


若きレヴィ・ディンが扱う魔術は”子供の落書きのようだ”と評されるほど拙い物体が具現化される物でした。
炎も岩も水も風も、まるで紙に描かれた落書きのようだったのです。
生まれつき盲目だった彼女の視界に生涯映るのは真っ暗な闇、しかし彼女は見えることの無い世界を夢見て決して想像する事を止めることはなく、何時しか”芸術的”と評されるまでにその魔術の腕を上げることとなります。
彼女が立つ戦場は血なまぐさいそれとは無縁で、味方を鼓舞し敵の士気を下げる豪華絢爛なる彩が常にありました。
或る日彼女の弟子の一人が問いました。”最も美しいと思った物はなんでしょう?”
彼女は具現化して見せることで答えました。
それは真っ暗な闇でした。

レヴィ・ディンメモリー?
d75834a0.jpeg





詠唱を横取りされ続けて、これだけは! と張り切ったはいいものの……。
噛んだので結局リズレッタが詠唱を引き継いでしまいました。
勿論彼女はあんまり考えずに引き継いだのでよくわかんないことになってます。
その証拠にこの必殺技、外しました。

○今回の闘技大会
c45eb4ca.jpeg




リズレッタは気分が乗らないのでサボっていた……筈なのに。

9af81910.jpeg



詠唱を

1f8e20bb.jpeg



横取る横取る。
……意外と楽しんでませんか?

○姫榊杏子さんを語る

上から下まで桃色ー!
なあんずさん。元気一杯な巫女の女の子です。
ネコミミは島に来てなぜか生えちゃったらしいです。
メッセして居るうちに、ルクラのシークレット【杖】の開放のきっかけとなった方です。
本当に偶然とはいえ、こういうのがあるからメッセは面白い。
サブキャラの瑚羨さん関係で現在緊迫した場面が展開されています。
どうなる! まて、次回!

○ゲンザさんの所へお邪魔して

ダンスパーティ、開催!
ちびっこだしほっとかれるかなーと予想して居たものの、なんと最後の最後でお誘いが!
お相手はパイレンジャー*放送は終了しました*の桃寺セキさん(2259)。
返事は……次回をお楽しみに。
余談ですがヤヨイさんとルクラは身長が近いちびっ子同士、何故だかわかりませんが誘われた理由と誘われた踊りが一緒だったりします。
何と言う偶然。

○巷で大流行のあのアイコン

2010031412.jpg

じゅるり。



ツイッター上で流行中のこのアイコン。
作者はラブラブ! で二位に輝かれた聖エドゥアールド学院 2年A組B班さん(148)です!
私もお願いしてこのアイコン、描いていただきました。
美味しそうな物を目にしてじゅるりしてる感じ。
……全裸じゃないよ。

○今回のプロフ絵

455lucra.jpg










455rizletta.jpg










リーリヤ・レクシュカさん(454)に描いていただいた絵を今回プロフ絵に設定しました。
りぼんをつけたルクラにネコミミのリズレッタ、可愛いですね!
突っ込んだら負け。

今でこそリズレッタがツンツンですが……。

453455sistersandlucra.jpg











いつかは小さくなってしまったもののラズレッタと出会えたら、こんな場面が出てくるのかもしれません。
(妹のラズレッタはEno.453さんのサブキャラとして活躍中です!)

○確率2%

goldlucra.png





おもちゃのかんづめをもらおう。
夏苛 椙璃さん(735)に描いていただきました、金のエンゼルクラ。
2%で当たるそうですよ。

拍手[0回]

【1】
 
いつかはきっと、その日が来るだろう。
毎日、そう思いながら老婆は日々を過ごしてきた。
いつかはきっと。それが明日か、三日後か、一週間後か、一ヵ月後かは判らない。
だが何時か必ずきっと、その日がやってくるのだと老婆はある種の覚悟を常に持ち続けていた。
リズレッタとのささやかなお茶会を楽しんだ後の余韻に浸りつつ、今こうして食器を洗っている最中でも、その気持ちは決して手放す事は無い。
だから――。
 
「おっ、おばあさんっ! おばあさんっ!」
「はい……? どうしたの、そんなに慌てて」
「杖っ……! わたしの杖、知りませんかっ!?」
 
――ルクラのこの問いに眼を丸くして、身体を硬直させたものの、消して手に持った洗い立ての食器を落とす事は、無かった。
 
【2】
 
「わたし、思い出したんですっ……! 杖を持ってたことに! でも、今はその杖が無くって……。……あのっ、わたしが最後に杖を持って遺跡に行ったの、覚えてませんか!? きっと遺跡のどこかに落としたんだと思うんです!」
「………………」
「……おばあ、さん?」
 
老婆は無言で手に持った皿を脇に置いて、洗剤に塗れた手を丁寧に洗う。
それからしっかりと手の水気を拭き取って、洗い終えていたティーセットを持ち出して、そそくさとお茶の準備を始めた。
 
「ねぇ、おばあさん!」
「慌ててはダメよ、お嬢さん。……さぁ、席に着いて、息を整えて。お茶を入れ終わったら、話しますから……」
「……? わかりました……?」
 
何時ものおばあさんらしくない、とルクラは思った。
だが、それを追求する事も出来ず、老婆の言うままに席に着くしかない。
 
「さぁ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
 
クッキーを出され、お茶もカップに注がれて。
15分程度の待っている時間が、酷く長く感じられた。
 
「ちょっと! 部屋の片付けぐらいしてから行きなさい! 全くどうしてこのわたくしがあなたの散らかした部屋を片付けないと……」
 
文句を言いながら二階から降りてきたリズレッタにも、謝罪の言葉を掛けることは出来なかった。
三人分のお茶を用意した老婆が、そのまま無言で自室に引っ込んでいった様子を見て、ますます疑問が膨れ上がり、それどころではなかったのだ。
此処でリズレッタが何時ものようにルクラの頬を抓って無理矢理にでも謝罪の言葉を絞りだしてしまう事もできたかもしれない。
だが、それは無かった。
リズレッタも異様な雰囲気を察知して、そして注目の対象をルクラではなく、老婆に向けていたのだ。
 
「……なんですの。またお茶?」
「い、いえ。杖の事をおばあさんに聞いたら……なぜか……」
「……?」
 
老婆が再び戻ってくるのに1分も掛からなかっただろうか。
その手には奇妙な文様がびっしりと描かれた布に包まれた品が大事そうに抱えられていた。
 
「おばあさん、それは……?」
「……何時か、きっと杖について何か聞いてくるんじゃないかと思っていたわ」
「えっ!?」
「これから話すことをよく聞いて頂戴」
 
テーブルの上に置かれたそれはコトリと小さく音を立てた。
木製の箱か何かがその布には包まれているらしい。
 
「……この中には、貴女の杖が入っているわ、お嬢さん」
「っ……!」
「二重に封印を施してあるけれど……わかるでしょう?」
「……はい」
 
その品が老婆の手を離れ、テーブルの上に置かれた直後からルクラも気づいた。
品から滲み出る気配は、不穏そのもので触れることすら遠慮したい物だった。
それはとても”怖い”物に見えた。
 
「……お嬢さん。貴女はあの日遺跡に出かけて、そして……遺跡の崩壊に巻き込まれた。貴女はそのとき何かとても大きな恐怖を抱いたみたいだったわ。この宿に帰りついた貴女は……見ているのも辛いほど、怯えていた」
 
椅子に腰掛けて、老婆はじっとルクラを見据えて話を続ける。
 
「このままだといけない、そう思ってねぇ……。本当は余り好ましい手段ではなかったのだけれど……。貴女の記憶の一部を、杖の中に封じ込めてしまったの。……遺跡での事を、よく思いだせるかしら? 杖を持っていた時の事を」
「……いえ」
「この中にある杖を」
 
老婆は再び箱を持って、そしてルクラのほうに近づける。
咄嗟にルクラは、身を縮める。
その反応を見て、老婆は少し暗い表情を見せた。
 
「……手に取れば、きっと記憶は全て戻ってくるでしょう。でも、今は止めておいた方がいいと私は思うのよ……。箱を近づけただけで、貴女は恐れた。今手に取れば……恐らくは」
「全ては元通り、怯える愚かな娘が一人完成する、だけですわね」
「っ!? り、リズレッタ!?」
 
ひょいと横から手を伸ばし、軽々と布に包まれた品をリズレッタは持って見せた。
涼しい顔で、布に描かれた文様をまじまじと見つめていたりもしてみせる。
 
「……ふぅん。なるほどかなりの高位に当たる封印ですわね。それを二重にしてもまだこの気配……。一体どれだけの物を詰め込んでしまったのでしょうね?」
「へ、平気なの?」
「えぇ? この程度、別にどうということもありませんけれど? でも、あなたが手に取れば……」
「うっ……」
 
くすりと冷たい笑みを浮べたリズレッタは、含みを持たせたまま、品を再びテーブルに置く。
わざわざルクラに近いところに置いてみて彼女の反応を楽しむのも忘れない。
 
「……もう一度、言っておくわ……。今これを手に取るのはお止しなさい、お嬢さん。何時かきっと、あの時の恐怖すら克服できる時が来る筈だから……。今は杖の事は忘れて、仲間の皆と楽しい時間を過ごすべきです……」
「………………」
 
素直に頷けない。
老婆の言う事は尤もだが、簡単に諦める事はできなかった。
捜し求めた品が目の前にあるというのに、手に取れない。
その悔しさから、どうしても首を縦に振れなかったのだ。
長い長い沈黙が場を支配する。
 
「……あら」
 
その沈黙を破ったのは、以外にもリズレッタだった。
 
「そういえばあなたの散らかした荷物を整理していたらこんなチケットがあったのだけど」
「え? ……あ」
 
衣服のポケットから無造作に取り出したそれは、ルクラがつい先日ゲンザという男から貰った”いべんとちけっと”だった。
開催の日付は今日、時刻は――。
 
「そろそろ出発しないと遅れるのではないかしら? それとも目の前の杖と視線だけで踊る方がお好き?」
「う……」
「さっさと準備をなさい」
 
ぴしゃりぴしゃりと畳み掛けるようにルクラに言い放つと、リズレッタはテーブルの上の品を掴むと、老婆にさっさと手渡してしまう。
 
「こんなもの、何時間睨んでも事態が好転などするものですか」
 
止めとばかりに、高慢な笑みを浮かべ、ルクラの心の内を見透かしたような言葉を投げかけたのだった。
 
【3】
ルクラを見送った――門限を定めてそれまでに必ず帰ってくるようにとリズレッタが条件をつけて――後、老婆とリズレッタにとっては二度目のお茶会が始まっていた。
一度目の時のような静かな賑やかさは無い。
どちらも、あのリズレッタでさえルクラの杖についてしきりに考え通しだったのだ。
 
「……ありがとうねぇ、お嬢さん」
 
ぽつりと老婆が呟き、リズレッタは頭の片隅で考えていた思考を停止せざるを得なかった。
そもそも自分が考えても理解できるような話でもないし、興味も段々薄れていっていたので丁度良いタイミングでもあった。
 
「……? 何のことですの」
「貴女があそこで厳しく言ってくれたから、あの子も諦めが付いたのだと思うわ……」
「……別に。決してあの娘を思ってあのような態度を取ったわけではありませんわ。……ただ気に入らなかっただけですもの」
「ふふ……そう……」
 
微笑む老婆を眺めつつ、リズレッタは眉を潜める。
本当に気に入らなかっただけだ、そう口に出せばまた老婆は微笑むに決まっている。
そもそもそんな事を考えている時点でルクラを思っている事になるのだが、今この場にそれについて言及する人間はいない。
 
「しかし、意外でしたわ。貴女があのような術を会得しているなんて」
「これでも昔は、それなりに名を馳せていたものですからねぇ……。ほら、あの子に貸してあげた魔石……あれは私の思い出の品なのよ……」
「……ふぅん」
「今でこそこうして腰を落ち着けているけれど……結婚するまでは結構、やんちゃもしたものよ……。今貴方達がしているような冒険に胸を躍らせていたわ……」
「……そうですの」
 
他者の思い出に興味は無い。
適当に相槌を打ちつつ過ぎる静かな時間。
 
「……ねぇ。あの子を貴女に、お願いしてもいいかしら……?」
「っ!?」
 
しかし突然振られた話に、リズレッタは咽た。
 
「いっ……げほっ……。いきなり何を言いますの!」
「お友達が沢山いて、この島での生活も慣れてきた……それはわかるのだけど……。やはりあの子はまだ、寂しがっているみたいなのよ……。私じゃあどうしても、救いきれない部分が残っているわ……」
「……だから、わたくしにあの娘の事を任せると?」
 
老婆は首を傾げる。
 
「ダメかしら……? お互いに悪い条件ではないと思うのだけど……?」
「お互いに……? 何を馬鹿な、わたくしに何の利があると――」
「では何故、あの子の傍にずっと居るのかしら……?」
 
――。
 
「……なんですって……?」

拍手[0回]

 ○お詫びにも出しましたが

台詞を変え忘れるとは何たる失態……!
アイコンは差し替えで一部は修正できましたが、どうにも出来ないのもあるのでこれはもう、赤っ恥として放っておく事にしました。
今度やったらジャガリコ一週間抜きのセルフ罰ゲームです。
万が一そうなった場合、他にも『罰ゲーム? よしやってやる』なんて方がいらしたらどしどし罰ゲームしちゃってください。
空URLでも何でも受けるよ!

○練習試合

ソウルリープ怖い。
早々にウーンズ回し始めて大正解でした。
トリプルホーンの皆様、お相手ありがとうございました!

○通常戦

ヴェンレンギモーラ強い。
大体ダメージ倍化している、かな?
マジチャくっつけて9ターンで放った必殺ボロウライフが1000突破したりとなかなか愉快な戦いとなりました。
が、PHP消費してたほうがよかったんじゃないのという結果になったのでこれはいただけない……。
次回速攻で潰すか回復に回るか凄く悩みます。
サンゴ戦控えてるしなぁ……。

○次回のお相手(練習試合)

第1886パーティ
 ENo.915 silbern様
 ENo.1165 風音 鈴様
 ENo.1886 栴様

そろそろ上位技能持ちの方と当たる事も多くなってくるようです。
よろしくお願いいたします。

○次回のお相手(通常戦)

小象×2
ロングダックスフンド×1

ちっちゃいほうの象さん……は恐らく問題ないですが、前衛さん二人のHPが半分ぐらいしかないのでなるべく早期決着を狙いたい所です。
トリプルエイドがいいのかなぁ。ウーンズがいいのかなぁ?
それともドリフトライフ?

○結局

ピアスは無視してサンゴ戦とその後のヘッドルーツに専念する方針になりました。
同じ間違いはしないように、今度はしっかり計画組まないと……!
反省と同時に燃えております。

○今回の必殺技

ウィンド・オブ・ゴルト
6141c454.jpeg


彼女の故郷にある険しきゴルト山脈に吹き荒れる風は凄まじく、毎年滑落者が後を立たない危険地域とされています。
その危険を冒すだけの価値が眠っている場所でもあるのですが……。
勿論ルクラにとっては伝え聞いていた話だけで作り上げた術なので、本物はもうちょっと弱かったり、逆にもっと強い風なのかもしれません。

メロディーライン
82fdfa03.jpeg


実はルクラ、それなりにピアノが弾けます。
楽譜を見ていて思いついた術。

○クロユキ ヤヨイさんを語る

リズレッタがメッセデビューをしてすぐに突撃していらした人その2、ヤヨイさん。
大きなクマのぬいぐるみと共に居る不思議な女の子です。
ぬいぐるみや本人にも色々秘密があるようです。反応ががらっと変わった気がする?
黒髪と銀髪をこよなく愛しているらしく、なるほどルクラとリズレッタはまさにそれに当てはまるコンビだったようです。
確か身長128cmだったと記憶してますが、同じ歳でこれだけ身長が近いのはヤヨイさんが始めての気がします。
年齢や身長をルクラが知れば、それはもう大喜びしそうです。

○キャラ語りですが

残すは二人(突撃なんかで新しく増えない限りは)となりました。
これが終了したら第二段を計画しています。
お楽しみに?

○愛瑠さんのプロフ絵が!

めっるめるにされそうです。
とっても可愛らしい!

○2000アクセス!

突破しました。
お越しいただき本当にありがとうございます。
常連さんも、初めてさんも、ごゆっくりどうぞ。楽しんでいってください。

○ちょっと宣伝

犬飼 四郎兵衛 験座さん(2061)のコミュにてイベントが開催されています。
気づいていたのは早かったんですが宣伝の手が遅かった……申し訳ないです。
詳細はリンクにあります”とにかく南海荘”またはゲンザさんのコミュページを参照なさってくださいませ。

出会いを求めてレッツダンスパーティ!

私も参加します。あちらでもよろしくお願いしますね。


YOUはSHOCK!

rukura20100307.png

愛で空が落ちてくる~♪


吹いても責任は取りません。

○それじゃあ

hako.JPG




箱に隠れます、バーリアッ。






YOUはSHOCKは嵋祝=彩洛さん(818)
箱ルクラはインピュリティゴーレムさん(576)に頂きました。
この場を借りて御礼申し上げます。

拍手[0回]

カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新CM
最新TB
プロフィール
HN:
鐘の音
性別:
非公開
自己紹介:
SD
-Eno.850セサリカ=ゴトランド(終了)
-Eno.37シルヴェリア・ミューアレネンス
偽島
-Eno.455ルクラ=フィアーレ→リズレッタ・メリゴール(終了)
六命
-Eno.1506レミス&ミーティア
バーコード
ブログ内検索
カウンター
リンク
酪農戦隊
酪農兵器
功夫集団
アクセス解析

Copyright © おしどり夫婦が行く。 All Rights Reserved.
Material & Template by Inori
忍者ブログ [PR]