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六命雑感、あと日記の保管庫もかねています。
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【1】
 
いつかはきっと、その日が来るだろう。
毎日、そう思いながら老婆は日々を過ごしてきた。
いつかはきっと。それが明日か、三日後か、一週間後か、一ヵ月後かは判らない。
だが何時か必ずきっと、その日がやってくるのだと老婆はある種の覚悟を常に持ち続けていた。
リズレッタとのささやかなお茶会を楽しんだ後の余韻に浸りつつ、今こうして食器を洗っている最中でも、その気持ちは決して手放す事は無い。
だから――。
 
「おっ、おばあさんっ! おばあさんっ!」
「はい……? どうしたの、そんなに慌てて」
「杖っ……! わたしの杖、知りませんかっ!?」
 
――ルクラのこの問いに眼を丸くして、身体を硬直させたものの、消して手に持った洗い立ての食器を落とす事は、無かった。
 
【2】
 
「わたし、思い出したんですっ……! 杖を持ってたことに! でも、今はその杖が無くって……。……あのっ、わたしが最後に杖を持って遺跡に行ったの、覚えてませんか!? きっと遺跡のどこかに落としたんだと思うんです!」
「………………」
「……おばあ、さん?」
 
老婆は無言で手に持った皿を脇に置いて、洗剤に塗れた手を丁寧に洗う。
それからしっかりと手の水気を拭き取って、洗い終えていたティーセットを持ち出して、そそくさとお茶の準備を始めた。
 
「ねぇ、おばあさん!」
「慌ててはダメよ、お嬢さん。……さぁ、席に着いて、息を整えて。お茶を入れ終わったら、話しますから……」
「……? わかりました……?」
 
何時ものおばあさんらしくない、とルクラは思った。
だが、それを追求する事も出来ず、老婆の言うままに席に着くしかない。
 
「さぁ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
 
クッキーを出され、お茶もカップに注がれて。
15分程度の待っている時間が、酷く長く感じられた。
 
「ちょっと! 部屋の片付けぐらいしてから行きなさい! 全くどうしてこのわたくしがあなたの散らかした部屋を片付けないと……」
 
文句を言いながら二階から降りてきたリズレッタにも、謝罪の言葉を掛けることは出来なかった。
三人分のお茶を用意した老婆が、そのまま無言で自室に引っ込んでいった様子を見て、ますます疑問が膨れ上がり、それどころではなかったのだ。
此処でリズレッタが何時ものようにルクラの頬を抓って無理矢理にでも謝罪の言葉を絞りだしてしまう事もできたかもしれない。
だが、それは無かった。
リズレッタも異様な雰囲気を察知して、そして注目の対象をルクラではなく、老婆に向けていたのだ。
 
「……なんですの。またお茶?」
「い、いえ。杖の事をおばあさんに聞いたら……なぜか……」
「……?」
 
老婆が再び戻ってくるのに1分も掛からなかっただろうか。
その手には奇妙な文様がびっしりと描かれた布に包まれた品が大事そうに抱えられていた。
 
「おばあさん、それは……?」
「……何時か、きっと杖について何か聞いてくるんじゃないかと思っていたわ」
「えっ!?」
「これから話すことをよく聞いて頂戴」
 
テーブルの上に置かれたそれはコトリと小さく音を立てた。
木製の箱か何かがその布には包まれているらしい。
 
「……この中には、貴女の杖が入っているわ、お嬢さん」
「っ……!」
「二重に封印を施してあるけれど……わかるでしょう?」
「……はい」
 
その品が老婆の手を離れ、テーブルの上に置かれた直後からルクラも気づいた。
品から滲み出る気配は、不穏そのもので触れることすら遠慮したい物だった。
それはとても”怖い”物に見えた。
 
「……お嬢さん。貴女はあの日遺跡に出かけて、そして……遺跡の崩壊に巻き込まれた。貴女はそのとき何かとても大きな恐怖を抱いたみたいだったわ。この宿に帰りついた貴女は……見ているのも辛いほど、怯えていた」
 
椅子に腰掛けて、老婆はじっとルクラを見据えて話を続ける。
 
「このままだといけない、そう思ってねぇ……。本当は余り好ましい手段ではなかったのだけれど……。貴女の記憶の一部を、杖の中に封じ込めてしまったの。……遺跡での事を、よく思いだせるかしら? 杖を持っていた時の事を」
「……いえ」
「この中にある杖を」
 
老婆は再び箱を持って、そしてルクラのほうに近づける。
咄嗟にルクラは、身を縮める。
その反応を見て、老婆は少し暗い表情を見せた。
 
「……手に取れば、きっと記憶は全て戻ってくるでしょう。でも、今は止めておいた方がいいと私は思うのよ……。箱を近づけただけで、貴女は恐れた。今手に取れば……恐らくは」
「全ては元通り、怯える愚かな娘が一人完成する、だけですわね」
「っ!? り、リズレッタ!?」
 
ひょいと横から手を伸ばし、軽々と布に包まれた品をリズレッタは持って見せた。
涼しい顔で、布に描かれた文様をまじまじと見つめていたりもしてみせる。
 
「……ふぅん。なるほどかなりの高位に当たる封印ですわね。それを二重にしてもまだこの気配……。一体どれだけの物を詰め込んでしまったのでしょうね?」
「へ、平気なの?」
「えぇ? この程度、別にどうということもありませんけれど? でも、あなたが手に取れば……」
「うっ……」
 
くすりと冷たい笑みを浮べたリズレッタは、含みを持たせたまま、品を再びテーブルに置く。
わざわざルクラに近いところに置いてみて彼女の反応を楽しむのも忘れない。
 
「……もう一度、言っておくわ……。今これを手に取るのはお止しなさい、お嬢さん。何時かきっと、あの時の恐怖すら克服できる時が来る筈だから……。今は杖の事は忘れて、仲間の皆と楽しい時間を過ごすべきです……」
「………………」
 
素直に頷けない。
老婆の言う事は尤もだが、簡単に諦める事はできなかった。
捜し求めた品が目の前にあるというのに、手に取れない。
その悔しさから、どうしても首を縦に振れなかったのだ。
長い長い沈黙が場を支配する。
 
「……あら」
 
その沈黙を破ったのは、以外にもリズレッタだった。
 
「そういえばあなたの散らかした荷物を整理していたらこんなチケットがあったのだけど」
「え? ……あ」
 
衣服のポケットから無造作に取り出したそれは、ルクラがつい先日ゲンザという男から貰った”いべんとちけっと”だった。
開催の日付は今日、時刻は――。
 
「そろそろ出発しないと遅れるのではないかしら? それとも目の前の杖と視線だけで踊る方がお好き?」
「う……」
「さっさと準備をなさい」
 
ぴしゃりぴしゃりと畳み掛けるようにルクラに言い放つと、リズレッタはテーブルの上の品を掴むと、老婆にさっさと手渡してしまう。
 
「こんなもの、何時間睨んでも事態が好転などするものですか」
 
止めとばかりに、高慢な笑みを浮かべ、ルクラの心の内を見透かしたような言葉を投げかけたのだった。
 
【3】
ルクラを見送った――門限を定めてそれまでに必ず帰ってくるようにとリズレッタが条件をつけて――後、老婆とリズレッタにとっては二度目のお茶会が始まっていた。
一度目の時のような静かな賑やかさは無い。
どちらも、あのリズレッタでさえルクラの杖についてしきりに考え通しだったのだ。
 
「……ありがとうねぇ、お嬢さん」
 
ぽつりと老婆が呟き、リズレッタは頭の片隅で考えていた思考を停止せざるを得なかった。
そもそも自分が考えても理解できるような話でもないし、興味も段々薄れていっていたので丁度良いタイミングでもあった。
 
「……? 何のことですの」
「貴女があそこで厳しく言ってくれたから、あの子も諦めが付いたのだと思うわ……」
「……別に。決してあの娘を思ってあのような態度を取ったわけではありませんわ。……ただ気に入らなかっただけですもの」
「ふふ……そう……」
 
微笑む老婆を眺めつつ、リズレッタは眉を潜める。
本当に気に入らなかっただけだ、そう口に出せばまた老婆は微笑むに決まっている。
そもそもそんな事を考えている時点でルクラを思っている事になるのだが、今この場にそれについて言及する人間はいない。
 
「しかし、意外でしたわ。貴女があのような術を会得しているなんて」
「これでも昔は、それなりに名を馳せていたものですからねぇ……。ほら、あの子に貸してあげた魔石……あれは私の思い出の品なのよ……」
「……ふぅん」
「今でこそこうして腰を落ち着けているけれど……結婚するまでは結構、やんちゃもしたものよ……。今貴方達がしているような冒険に胸を躍らせていたわ……」
「……そうですの」
 
他者の思い出に興味は無い。
適当に相槌を打ちつつ過ぎる静かな時間。
 
「……ねぇ。あの子を貴女に、お願いしてもいいかしら……?」
「っ!?」
 
しかし突然振られた話に、リズレッタは咽た。
 
「いっ……げほっ……。いきなり何を言いますの!」
「お友達が沢山いて、この島での生活も慣れてきた……それはわかるのだけど……。やはりあの子はまだ、寂しがっているみたいなのよ……。私じゃあどうしても、救いきれない部分が残っているわ……」
「……だから、わたくしにあの娘の事を任せると?」
 
老婆は首を傾げる。
 
「ダメかしら……? お互いに悪い条件ではないと思うのだけど……?」
「お互いに……? 何を馬鹿な、わたくしに何の利があると――」
「では何故、あの子の傍にずっと居るのかしら……?」
 
――。
 
「……なんですって……?」

【1】
 
いつかはきっと、その日が来るだろう。
毎日、そう思いながら老婆は日々を過ごしてきた。
いつかはきっと。それが明日か、三日後か、一週間後か、一ヵ月後かは判らない。
だが何時か必ずきっと、その日がやってくるのだと老婆はある種の覚悟を常に持ち続けていた。
リズレッタとのささやかなお茶会を楽しんだ後の余韻に浸りつつ、今こうして食器を洗っている最中でも、その気持ちは決して手放す事は無い。
だから――。
 
「おっ、おばあさんっ! おばあさんっ!」
「はい……? どうしたの、そんなに慌てて」
「杖っ……! わたしの杖、知りませんかっ!?」
 
――ルクラのこの問いに眼を丸くして、身体を硬直させたものの、消して手に持った洗い立ての食器を落とす事は、無かった。
 
【2】
 
「わたし、思い出したんですっ……! 杖を持ってたことに! でも、今はその杖が無くって……。……あのっ、わたしが最後に杖を持って遺跡に行ったの、覚えてませんか!? きっと遺跡のどこかに落としたんだと思うんです!」
「………………」
「……おばあ、さん?」
 
老婆は無言で手に持った皿を脇に置いて、洗剤に塗れた手を丁寧に洗う。
それからしっかりと手の水気を拭き取って、洗い終えていたティーセットを持ち出して、そそくさとお茶の準備を始めた。
 
「ねぇ、おばあさん!」
「慌ててはダメよ、お嬢さん。……さぁ、席に着いて、息を整えて。お茶を入れ終わったら、話しますから……」
「……? わかりました……?」
 
何時ものおばあさんらしくない、とルクラは思った。
だが、それを追求する事も出来ず、老婆の言うままに席に着くしかない。
 
「さぁ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
 
クッキーを出され、お茶もカップに注がれて。
15分程度の待っている時間が、酷く長く感じられた。
 
「ちょっと! 部屋の片付けぐらいしてから行きなさい! 全くどうしてこのわたくしがあなたの散らかした部屋を片付けないと……」
 
文句を言いながら二階から降りてきたリズレッタにも、謝罪の言葉を掛けることは出来なかった。
三人分のお茶を用意した老婆が、そのまま無言で自室に引っ込んでいった様子を見て、ますます疑問が膨れ上がり、それどころではなかったのだ。
此処でリズレッタが何時ものようにルクラの頬を抓って無理矢理にでも謝罪の言葉を絞りだしてしまう事もできたかもしれない。
だが、それは無かった。
リズレッタも異様な雰囲気を察知して、そして注目の対象をルクラではなく、老婆に向けていたのだ。
 
「……なんですの。またお茶?」
「い、いえ。杖の事をおばあさんに聞いたら……なぜか……」
「……?」
 
老婆が再び戻ってくるのに1分も掛からなかっただろうか。
その手には奇妙な文様がびっしりと描かれた布に包まれた品が大事そうに抱えられていた。
 
「おばあさん、それは……?」
「……何時か、きっと杖について何か聞いてくるんじゃないかと思っていたわ」
「えっ!?」
「これから話すことをよく聞いて頂戴」
 
テーブルの上に置かれたそれはコトリと小さく音を立てた。
木製の箱か何かがその布には包まれているらしい。
 
「……この中には、貴女の杖が入っているわ、お嬢さん」
「っ……!」
「二重に封印を施してあるけれど……わかるでしょう?」
「……はい」
 
その品が老婆の手を離れ、テーブルの上に置かれた直後からルクラも気づいた。
品から滲み出る気配は、不穏そのもので触れることすら遠慮したい物だった。
それはとても”怖い”物に見えた。
 
「……お嬢さん。貴女はあの日遺跡に出かけて、そして……遺跡の崩壊に巻き込まれた。貴女はそのとき何かとても大きな恐怖を抱いたみたいだったわ。この宿に帰りついた貴女は……見ているのも辛いほど、怯えていた」
 
椅子に腰掛けて、老婆はじっとルクラを見据えて話を続ける。
 
「このままだといけない、そう思ってねぇ……。本当は余り好ましい手段ではなかったのだけれど……。貴女の記憶の一部を、杖の中に封じ込めてしまったの。……遺跡での事を、よく思いだせるかしら? 杖を持っていた時の事を」
「……いえ」
「この中にある杖を」
 
老婆は再び箱を持って、そしてルクラのほうに近づける。
咄嗟にルクラは、身を縮める。
その反応を見て、老婆は少し暗い表情を見せた。
 
「……手に取れば、きっと記憶は全て戻ってくるでしょう。でも、今は止めておいた方がいいと私は思うのよ……。箱を近づけただけで、貴女は恐れた。今手に取れば……恐らくは」
「全ては元通り、怯える愚かな娘が一人完成する、だけですわね」
「っ!? り、リズレッタ!?」
 
ひょいと横から手を伸ばし、軽々と布に包まれた品をリズレッタは持って見せた。
涼しい顔で、布に描かれた文様をまじまじと見つめていたりもしてみせる。
 
「……ふぅん。なるほどかなりの高位に当たる封印ですわね。それを二重にしてもまだこの気配……。一体どれだけの物を詰め込んでしまったのでしょうね?」
「へ、平気なの?」
「えぇ? この程度、別にどうということもありませんけれど? でも、あなたが手に取れば……」
「うっ……」
 
くすりと冷たい笑みを浮べたリズレッタは、含みを持たせたまま、品を再びテーブルに置く。
わざわざルクラに近いところに置いてみて彼女の反応を楽しむのも忘れない。
 
「……もう一度、言っておくわ……。今これを手に取るのはお止しなさい、お嬢さん。何時かきっと、あの時の恐怖すら克服できる時が来る筈だから……。今は杖の事は忘れて、仲間の皆と楽しい時間を過ごすべきです……」
「………………」
 
素直に頷けない。
老婆の言う事は尤もだが、簡単に諦める事はできなかった。
捜し求めた品が目の前にあるというのに、手に取れない。
その悔しさから、どうしても首を縦に振れなかったのだ。
長い長い沈黙が場を支配する。
 
「……あら」
 
その沈黙を破ったのは、以外にもリズレッタだった。
 
「そういえばあなたの散らかした荷物を整理していたらこんなチケットがあったのだけど」
「え? ……あ」
 
衣服のポケットから無造作に取り出したそれは、ルクラがつい先日ゲンザという男から貰った”いべんとちけっと”だった。
開催の日付は今日、時刻は――。
 
「そろそろ出発しないと遅れるのではないかしら? それとも目の前の杖と視線だけで踊る方がお好き?」
「う……」
「さっさと準備をなさい」
 
ぴしゃりぴしゃりと畳み掛けるようにルクラに言い放つと、リズレッタはテーブルの上の品を掴むと、老婆にさっさと手渡してしまう。
 
「こんなもの、何時間睨んでも事態が好転などするものですか」
 
止めとばかりに、高慢な笑みを浮かべ、ルクラの心の内を見透かしたような言葉を投げかけたのだった。
 
【3】
ルクラを見送った――門限を定めてそれまでに必ず帰ってくるようにとリズレッタが条件をつけて――後、老婆とリズレッタにとっては二度目のお茶会が始まっていた。
一度目の時のような静かな賑やかさは無い。
どちらも、あのリズレッタでさえルクラの杖についてしきりに考え通しだったのだ。
 
「……ありがとうねぇ、お嬢さん」
 
ぽつりと老婆が呟き、リズレッタは頭の片隅で考えていた思考を停止せざるを得なかった。
そもそも自分が考えても理解できるような話でもないし、興味も段々薄れていっていたので丁度良いタイミングでもあった。
 
「……? 何のことですの」
「貴女があそこで厳しく言ってくれたから、あの子も諦めが付いたのだと思うわ……」
「……別に。決してあの娘を思ってあのような態度を取ったわけではありませんわ。……ただ気に入らなかっただけですもの」
「ふふ……そう……」
 
微笑む老婆を眺めつつ、リズレッタは眉を潜める。
本当に気に入らなかっただけだ、そう口に出せばまた老婆は微笑むに決まっている。
そもそもそんな事を考えている時点でルクラを思っている事になるのだが、今この場にそれについて言及する人間はいない。
 
「しかし、意外でしたわ。貴女があのような術を会得しているなんて」
「これでも昔は、それなりに名を馳せていたものですからねぇ……。ほら、あの子に貸してあげた魔石……あれは私の思い出の品なのよ……」
「……ふぅん」
「今でこそこうして腰を落ち着けているけれど……結婚するまでは結構、やんちゃもしたものよ……。今貴方達がしているような冒険に胸を躍らせていたわ……」
「……そうですの」
 
他者の思い出に興味は無い。
適当に相槌を打ちつつ過ぎる静かな時間。
 
「……ねぇ。あの子を貴女に、お願いしてもいいかしら……?」
「っ!?」
 
しかし突然振られた話に、リズレッタは咽た。
 
「いっ……げほっ……。いきなり何を言いますの!」
「お友達が沢山いて、この島での生活も慣れてきた……それはわかるのだけど……。やはりあの子はまだ、寂しがっているみたいなのよ……。私じゃあどうしても、救いきれない部分が残っているわ……」
「……だから、わたくしにあの娘の事を任せると?」
 
老婆は首を傾げる。
 
「ダメかしら……? お互いに悪い条件ではないと思うのだけど……?」
「お互いに……? 何を馬鹿な、わたくしに何の利があると――」
「では何故、あの子の傍にずっと居るのかしら……?」
 
――。
 
「……なんですって……?」
 

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